一方、受け手となる共和ライフテクノ側でも厳格な基準が求められる。炭化素材は脆くて硬い。いかに安全・安心の面で基本スペックを維持しつつ、炭化素材を融合するか──。同社の楠田修平は懸念を払拭し、炭化素材の可能性を見出した。「デザイン性、風合い・触感、高耐久性能(10年相当)を満たしております。ラボ試作を相当な回数繰り返しました」(楠田)
半年以上に及ぶ試行錯誤を経て、耐久性が高い「.Garbon Synthetic Leather」の開発に成功した。

.Gabはこの技術を携え、自社廃棄物の循環に長年取り組むオフィス家具大手のオカムラへ共創をもちかけた。オカムラの深津善之は、年間約1.6万tに及ぶ排出物のなかでも、再資源化が難しく埋立処理の最小化が課題の廃プラスチックや繊維くず等の循環に向け、まずは象徴的な家具の張り材としてプロトタイプを製作した。
「張り材同等、家具の塗装部位は多く、家具自体の仕上げ品質や見た目の印象に大きな影響を与えます。塗料の顔料への展開には可能性を感じています」(深津)
家具から空間全体へ。オカムラとの共創は「BtoBのゴミをBtoBに戻す」循環モデルの核となる。炭素を家具や建築材など多様なプロダクトとして定着させ、新たな循環経済のマーケットを切り拓くことこそが「.Garbon」の目指すイノベーションだ。
共創の輪は、排出企業や中間処理業者を巻き込んだ産業インフラの構築へと向かう。中間処理業者に炭化設備を導入してもらい、できた炭を製品素材として価値化できれば、処理コストが下がり関係各所の利益率が改善すると、山内は考えている。「経済合理性を担保したうえで、すべての廃棄物が価値ある素材に変わり『ゴミという概念がなくなる』世界の実現を目指して共創を推進していきます」(山内)
ブランド名の「.Garbon」の先頭に付くドットは、英文で文章の終わりを意味するピリオドである。そこには「終わりを始まりにする」という意味を込めている。廃棄物という終わりを新しい物語の起点にするのが狙いだ。スタートアップの構想力、熟練の炭化技術、確かな素材開発力、業界大手のスケールが噛み合い、「ゴミ」の定義を変える物語が今、始まろうとしている。
楠田修平◎共和ライフテクノ技術部 主幹。高度な技術力を生かし、炭化素材と合成皮革を融合させた新素材の量産化を実現した。(写真左)
山内萌斗◎.Gab代表取締役CEO。大学在学中に創業。「ゴミをなくす」を掲げ、「.Garbon」では共創による資源循環事業を牽引する。(同左中)
深津善之◎オカムラ 開発戦略サポート部 部長。自社の工場廃棄物の循環や、持続可能なオフィス家具の開発を統括する。(同右中)
大木武彦◎大木工藝 代表取締役。多くの特許をもつ独自の高度炭化技術を確立し、産業廃棄物の高付加価値素材化を推進する。(同右)


