Androidになぞらえたのはグーグル自身
今年2月、Intrinsicは、アルファベット(グーグルの親会社)の「Other Bets」(本業以外の新規事業群)から外れ独立したグループとしてグーグル本体に組み込まれた。IntrinsicのCEO、ウェンディ・タン・ホワイトは、グーグルでOther Betsの最高製品責任者(CPO)を務めるヒロシ・ロックハイマーの直属となった。この再編によって、IntrinsicはGeminiのモデル、Google Cloudのインフラ、Google DeepMindの研究成果を活用できるようになった。
タン・ホワイトはCNBCに対し、統合の話がまとまった際に、グーグルCEOのサンダー・ピチャイがこのプラットフォームについて語った言葉を明かしている。ピチャイは、Intrinsicを「ロボット版Android」と呼んだという。
それから7カ月がたち、Androidで使われた戦略が今、形になりつつある。
1. 誰もが必要とする層を無償で配る
2. それを、本当に優れていて、本当にオープンで、本当に利用条件の緩いものにする
3. その上にエコシステム(関連する企業や開発者が集まってできる経済圏)を育てる
4. 収益を生む部分は手元に残す
最後の点について、Intrinsicはかなり率直だ。同社は発表のなかで、Intrinsic Coreで構築したソリューションは「高度なAIモデル、Intrinsic Flowstate、産業用グレードのクラウドサービスを含む当社のエンタープライズサービスをはじめ、Intrinsicのほかの製品・サービスとも自動的に連携する。リファクタリング(プログラムの動作を変えずに内部の構造を整理し直すこと)やコードの書き直しは必要ない」としている。
つまり、制御フレームワークも、デジタルツイン(現実の設備や工程を仮想空間に再現したもの)も、ドライバーも無料だが、高度なAIモデルは無料ではない。ロボットのアプリケーションをウェブ上で開発し、シミュレーションで検証するための同社の開発環境Flowstateも、無料ではない。そして、産業用グレードのクラウドも無料ではない。
これは、レッドハットが数十億ドル(数千億円)規模の企業を築いたやり方とよく似ている。レッドハットは、オープンソースのOSであるLinuxを企業向けに提供し、サポートなどの有償サービスで収益を上げてきたソフトウェア企業だ。要するにグーグルは、Geminiを搭載したフィジカルAI(ロボットなどを通じて現実世界で動作するAI)を広めるための流通経路を育てようとしているのである。しかもそれを、開発者がシステムの設計をいったん決めると後から変えにくくなる、ソフトウェアの低い層で行っている。


