細胞表面に糖を加え、骨髄細胞を骨へ届きやすくする
骨髄には、骨芽細胞のもとになる細胞が含まれている。培養皿でも増やしやすいため、骨量が減る病気の治療候補として有望だった。だが、過去に骨髄細胞を血流へ投与した試みでは、期待した効果が得られなかった。
問題は、投与した骨髄細胞が血流から骨へ移る仕組みにあった。骨髄内の血管壁を通り抜けるには、細胞が血管壁へ接着できる性質が必要になる。血液を作る幹細胞はこの性質を自然に持つため、骨髄移植では骨髄へ到達できる。骨を修復する骨髄細胞は同じ性質を持たず、そのまま点滴すると体内を循環し、必要な骨を通り過ぎてしまう。
研究チームが着目したのは、骨髄へ入りやすい細胞と入りにくい細胞では、細胞表面の糖が1つ違うことだった。天然酵素と不足している糖を含む溶液で細胞を短時間処理し、細胞表面に糖分子を1つ加えると、血管壁へ接着して骨へ到達しやすくなる。骨へ到達した細胞は骨形成を促す。
細胞内部には手を加えず、遺伝子も編集しない。追加した糖は2日以内に自然に失われるが、細胞が骨へ到達して定着するには十分な時間だ。
女性10人の小規模試験で、骨折・骨密度・痛みが改善
参加女性は50~75歳で、全員が少なくとも1回骨折しており、ほぼ全員が再び骨折するリスクが高かった。骨盤の骨から骨髄を採取し、数週間かけて数百万個まで細胞を増やした後、細胞表面に糖を加えた。加工した細胞は腕から点滴で体内へ戻し、全員が翌日に帰宅した。点滴投与に伴う反応はみられなかった。
試験全体では約6年間にわたって経過を観察し、がん、骨が本来ない場所にできる異所性骨形成、その他の予期しない症状は確認されなかった。
骨折だけでなく、骨密度や骨組織の量、骨内部の構造も改善した。投与4カ月後に骨盤の骨から採取した試料では、治療当日の試料と比べて骨組織の量が約2倍だった。2年後の手首の詳細な画像検査でも、骨内部の構造改善が確認された。参加者が報告した痛みは約3分の1減り、日常動作の困難さも明らかに軽くなった。
ただし、試験参加者は女性10人だけで、規模は小さい。投与後の骨折減少は長期追跡でも続いた。使った細胞は、骨粗しょう症が進んだ高齢女性自身の骨髄から採取したものだった。従来は治療に使うには機能が衰えすぎていると考えられていたが、今回の試験では骨組織を増やした。
細胞表面を軽く修飾した骨髄由来細胞の点滴は、骨粗しょう症に限らず、組織の修復や再生が必要な他の病気にも応用できる可能性がある。


