カルチャー

2026.10.01 12:30

「未来は過去のなかにある」 NIGO®︎流、カルチャーをビジネスにする方法

NIGO®|ファッションデザイナー/クリエイティブディレクター

要因はいろいろある。例えばプロパー消化率は100%で、セールや値引きはしない。一般的に値引きをしないラグジュアリーブランドは在庫を長期間抱えがちだが、HUMAN MADEの年間商品消化率は98%で、翌シーズンを待たずほぼ売り切る。販管費率は34%と業界でも低水準だ。販管費を抑えても売り切れるのはブランド力が強いからだが、ブランド力の源泉は、NIGOが生み出すクリエイティブにある。

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「NIGOさんはまず背景にあるストーリーに目を向け、それをくみ取りながら再構成していきます。例えばディズニーのキャラクターは誰でも知っているIPですが、NIGOさんはディズニーを深く理解したうえで独自の型をつくっていく。だから、みんな知っているのに誰も見たことのない新しいものが生まれる」(松沼)

NIGOが紡いだストーリーをブランド化するには、それをプロダクトとして具現化する力も必要だ。ここで販管費の抑制が効いてくる。商品原価を惜しめば、クリエイターが望む品質は実現できない。HUMAN MADEは販管費を抑えることで捻出した費用を商品原価に投入。高品質なものづくりがブランドを強化し、その強さが在庫費用や出店費用の低コスト化につながっている。このサイクルが高い収益性を支えているのだ。

 「NIGOに依存しない」ブランドへ

経営とクリエイティブの両方を見てきたNIGOは24年、事業のさらなる成長を見据えた決断をした。

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NIGOがブランドを立ち上げたのは10年。16年にオツモとして法人化し、自ら経営トップとしてクリエイティブとビジネスの両輪を回してきた。しかし21年、サンリオ出身でIPに強い鳩山玲人をCSO、松沼をCOOに迎え、徐々に経営のバトンを渡していく。24年には取締役CEOを退任し、クリエイティブディレクターに専念した。初期のHUMAN MADEは、クリエイションとビジネスを一体で動かして成長してきたが、なぜあえて両者を分離したのか。NIGOは理由をこう明かす。

「自分はあまり経営の才がないんです。前のブランドで負け戦を経験して、学ぶものは非常に多かった。ですから、次はある程度のところまでは自分でやっても、事業を拡大するフェーズに入ったら経営は人に託そうと決めていました」

NIGOが「負け戦」と表現したのは、自身が1993年に立ち上げた伝説的なブランド「A BATHING APE」の顛末だ。裏原ブームを牽引して歴史に名を刻んだが、拡大路線でつまずき、NIGOは2011年に会社を売却した。その経験から「ある程度の規模に達すると両立は難しい」と痛感していたのだ。もちろんこれは後ろ向きの決断ではない。次の未来をつくるために過去から学んだ“The Future Is In The Past”の一手である。

次の未来はグローバルにある。HUMAN MADEは、自社を「人間の閃きと、人の手が生み出すカルチャーの芽をマンガ、アニメ、ゲームに続く日本を代表するクリエイティブ産業に育てる会社」と位置づける。すでに海外売上比率は65%に達し、日本のストリートカルチャーを代表するブランドとして世界に認知されているが、今後は現地展開を進め、グローバルブランドとしてのポジションを固めていく。

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文=村上 敬、写真=大野隼男、編集=松崎美和子

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