非合理だけど美しいもの
では、岡がつなぎ残したい「文化」とは何か。
「インターネットやAI、グローバル物流のシステムが発達しすぎた今の世界では説明がつかない『非合理だけれど美しいこと』ってたくさんあると思うんです」
例えば岡は瀬戸田の町中華で、頼んでいない前菜が出され、最後には「仕事頑張ってるんだから、お代はいらないよ」と言われたという。岡は、そんな合理性では測れない営みや関係を文化ととらえる。その価値に引かれて旅人が訪れ、お金が落ちることで小さな文化もサバイブしていく。「誰がもっているかで、お金の意思って変わるんです。どういう人に応援してもらうか、どういう種類のお金を巻き込むか次第で、細切れになった世界はもう一回ひとつにつながる可能性がある」
その考えをかたちにしたのが「GOOD SOIL FUND」だ。巨大ファンドで、規模とリターンを追う不動産投資を経験した岡は、むしろその反動からファンドに距離を置いていたが、同じ意思をもつ人が資金を出し合う「箱」ととらえ直した。今年6月、68億円でファイナルクローズ。借り入れを含め150億円規模の開発が可能になった。ファンドで核となるホテルを開発し、Stapleの自己資金で立ち飲み店や書店など日常を支える小さな場所をつくる。人とお金を地域で循環させ、次の営みへつなぐ仕組みだ。
さらに、期限のあるファンドが資産を売却しても関係を途切れさせないため、住民や町のファンが少額ずつ出資して資産をもつ「市民ファンド」も構想する。
「いちばん大事なのは参加です。その町にいなくても、未来を一緒につくっている感覚をもてる。人口は減っても、その町に能動的にかかわる人を増やしたい」
自然と文化を起点に、経済のあり方を組み直す。岡が試みているのは、資本主義の仕組みを使いながら、それによって断絶した関係をつなぎ直すことなのだ。
おか・ゆうた◎岡山県生まれ、米コネチカットと東京育ち。Starwood Capital Groupの東京、サンフランシスコ拠点で不動産投資などに従事。のちにシンガポールで独立し、Aman Resortsなどホテルブランドの投資アドバイザリーを手がけた。2018年、Stapleを創業。


