「手放す」だけでは不十分
心理学者はこのプロセスを目標調整と呼ぶ。そして、これには組み合わせることで初めて機能する2つの要素がある。1つ目は「目標からの離脱」であり、達成できなくなった目標に対して注いでいた努力や感情的な投資を、本当に引き揚げることを意味する。2つ目は「目標への再関与」で、取り組む価値のある別の目標を見つけ、実際にそれを始めることだ。
学術誌『Nature Human Behaviour』に2025年に掲載されたレビューでは、200件以上の研究から得られた1400超の知見を統合したところ、この2つの要素はいずれもより高いウェルビーイング(持続的な幸福状態)と関連していると結論づけられた。効果がないのは、実際には追求していない目標に固執し続けることだ。
これは、代替となる目標を省略できない理由でもある。10月になって「ハーフマラソンは無理」と決めるのは単なる喪失であり、脳はそれをそのように認識する。だが、「ハーフマラソンは走らない。その代わり、これから土曜の朝は友人と散歩する時間にする」と決めれば、それは方向転換だ。外から見ればこの2つはほとんど同じで、その受け止め方の違いは、次に何をするかを明確にしたかどうかにある。
「新年の抱負」に勝る理由
新年を待つことは非合理的ではない。行動科学者はフレッシュスタート効果を指摘している。これは重要な日付の直後に、新しい目標に取り組み始める傾向のことで、1月1日は私たちにとって最も意味のある節目だ。
しかし、待つことには見落としやすい代償がある。学術誌『Organizational Behavior and Human Decision Processes』に2020年に掲載された研究では、新たなスタートがすぐ先に見えていると、人は未来の自分を、物事を処理してくれる別の人間のように扱い始め、現在取り組んでいる目標への努力をひそかに緩めてしまうことが明らかにされている。問題は、未来の自分が失われた努力を、しっかり取り戻してくれるわけではない点にある。
こうした節目に関する研究では、その効果が1月だけに限られないこともわかっている。月の初めや季節の変わり目もほぼ同じ役割を果たす。節目が役に立つのは、それ以前の自分と、それ以後になろうとしている自分との間に一線を引くからだ。10月1日においても、それを節目とすることを決めた人にとっては、その境界線となり得るのだ。


