新規事業

2026.09.29 10:30

東大発ベンチャーと群馬の町工場が起こす自動車革命。3年の開発期間を数カ月に縮めた共創

浅野圭祐(写真左)・須藤 海(同右)

バンパー裏に設置される衝撃を吸収する部品。特徴的な波打つ形状は、独自の設計と職人の加工技術で実現した。
バンパー裏に設置される衝撃を吸収する部品。特徴的な波打つ形状は、独自の設計と職人の加工技術で実現した。

古い循環を捨てる。フィードフォワード

バンパー一体型のような試作部品の先行開発は、通常2〜3年はかかる。それを両社は、設計図面の提出まで2カ月、金型製作3週間、プレス成形と溶接3日で駆け抜けた。図面確定後の手戻りが一切なかったからだ。これを可能にしたのが、「循環型開発プロセス」と呼ぶ仕事の進め方だ。

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顕在化した不具合を設計に戻すフィードバックを繰り返し、図面を熟成させ、ようやく量産に至るこれまでの手法を両社は「捨てた」。試作で蓄積した職人の勘どころをパラメーターとして言語化し、NatureArchitectsの設計システムにあらかじめ組み込んだ。効くのは一巡目だけではない。不具合が減ると同時に、次は必ず性能要求が上がる。このフィードフォワードなら、前の機種で言語化した勘どころが、上がる要求を見越して次の設計に先回りで組み込まれる。機種を重ねるほど設計は賢くなり、開発期間は縮む。(下図)

従来の開発は機種ごとに閉じていた。試作や量産で見つかった不具合を設計に戻して直す、フィードバックの繰り返しだ。そこで得た知見は次の機種に継承されず、性能要求が上がるたびに同じ手戻りが再現された。循環型は流れを反転させる。設計と生産要件を初めから一体で組み、量産までに得た結果とノウハウを次機種の設計へ前送りする。次機種で上がる性能要求も、材料の高強度化などとして予測し、あらかじめ設計ロジックに織り込む。試作は不具合を探す場から成立性を確かめる場へと変わり、機種を重ねるほど設計レベルは上がっていく。
従来の開発は機種ごとに閉じていた。試作や量産で見つかった不具合を設計に戻して直す、フィードバックの繰り返しだ。そこで得た知見は次の機種に継承されず、性能要求が上がるたびに同じ手戻りが再現された。循環型は流れを反転させる。設計と生産要件を初めから一体で組み、量産までに得た結果とノウハウを次機種の設計へ前送りする。次機種で上がる性能要求も、材料の高強度化などとして予測し、あらかじめ設計ロジックに織り込む。試作は不具合を探す場から成立性を確かめる場へと変わり、機種を重ねるほど設計レベルは上がっていく。

設計側の速さも常識外れだ。設計と性能評価を1人のエンジニアが担い、自社開発のプラットフォームが最適化を回す。10日で1案を検討していた開発現場で、1日で10案。勝ち残った1案が浅野に渡る。

開発速度は国内自動車メーカーの経営層にとって一大テーマだ。メーカー自身が競争力と差別化のために付加価値を求め、試作メーカーにもそれを期待し始めている。速度も技術力も自前主義で賄うのではなく、協業で獲る。試作メーカーが設計の上流へ踏み込む構造変化が、それを後押しする。「未経験の形状を作り、手戻りのない開発プロセスを手の内にできた。それ自体が『技術資産』だ」と浅野は言う。Nature Architectsのシステムにも職人の勘どころが積み上がる。須藤は続ける。「完成車メーカーも試作メーカーもエンジニアリング会社も一丸となるべきだ。この共創は日本の製造業の未来を切り開く武器になる」。

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浅野圭祐◎テキサス大学アーリントン校卒業。帰国後、人材サービス会社へ就職。その後、医療関連メーカーに転職。33歳で曽祖父が創業した浅野へ入社。京都で新規営業に従事。2024年、4代目として現職。(写真左)

須藤 海◎山形県生まれ。東北大学理学部卒業後、東京大学大学院総合文化研究科にて折紙工学の研究で修士号取得。修士課程修了後、Nature Architectsに取締役として参画。2024年より代表取締役社長。(同右)

文=坂元耕二 写真=小田駿一

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