働き方

2026.09.28 17:00

35歳時代遅れ説をデータが「完全否定」、AI時代に中堅社員の採用が増える理由

stock.adobe.com

ミレニアル世代は「AI」「仕事」「減少」といったキーワードばかりを意識し、本来であれば23歳の若者に当てはまるストーリーを、自分たちのキャリアに重ねてしまう。彼らの世代特有のトラウマが、その勘違いを助長させるとも言える。リーマンショック直後の2008年に学校を卒業した彼らは、なんの前触れもなく足元が崩れ去ることを学んだ世代だ。それ以来、わずかに業績が落ち込んだ四半期が到来するたびに、同じ映画の序章のように受け止め怯えてきた。過去のパターンを察知する能力は、生き残るためのスキルと言える。ただしそのスキルは、AIを前にして今、誤作動を起こしている。

advertisement

自分を「安売り」することの代償

こうした思い込みは、採用内定の段階で実際の行動となって現れ、その行動は数字にも表れている。

オンライン求人プラットフォームであるZipRecruiterの調査では、新規採用者の27%が前職より低い給与を受け入れており、その理由としてうち65%が、「仕事が欲しかった」ことを挙げている。提示された条件について何らかの交渉を行った人の割合はわずか30%であり、前四半期の36%から低下している。

自らの給与を低く見積もる傾向は、内定提示の段階にとどまらない。求人サイトMonsterが7月に実施した、米国の労働者1020人を対象とした調査の報告書『2026 Job Security Report』によると、その54%が「雇用安定性を高められるなら給与の減額を受け入れる」と回答。また、28%は「給与の少なくとも5%カットを受け入れる」意向を示し、11%は「10%超の減額」さえ受け入れると回答している。

advertisement

雇用の安定は、買い手である企業の足元を見た提示額によって低く抑えられている。自分はもう時代遅れだと思い込んでいる労働者は、最初に提示された給与額を受け入れる。交渉を行わず、本来なら2年前に終えているはずの、自身の力量に見合わない退屈な仕事に留まり続けている。こうした行動は、人事部が管理する人材定着率のダッシュボード(管理システム)上では、「忠誠心」として数値化されるが、実際のところ、それは単なる「恐れ」でしかない。

この「安売り」の影響は積層していく。物価が上昇する中、2年間給与が据え置かれることは一時的な停滞に留まらず、将来の昇給額の計算基準を恒久的にリセットしてしまうことになる。

データを基にした適正な給与の算出

こうした事態を軌道修正するには、地味な作業が必要となる。次に交渉する前に、実際の市場における実際の役職について、実際の給与額を把握するのだ。

まずは賃金動向の指標を見るべきだろう。アトランタ連邦準備銀行の賃金上昇トラッカー(2026年7月)によると、転職者の昇給率が4.4%だったのに対し、同じ会社に留まった人の場合は3.6%とされる。この差こそが、誰も試そうとしない労働市場が持つ代償であり、歪みだと言える。わずか3%の昇給を提示しながら「これが市場の相場だよ」「競争力がある水準だ」と言うマネジャーがいれば、その交渉の場にこの「0.8%」という数字を提示すべきだ。

ネット掲示板やSNS上の噂話は、「同業者たちがどう感じているか」を知るには役立つ。しかし、同業者たちの「価値」を知る点ではほとんど役に立たない。今年の大半において、人々の心理と採用データは真逆の方向を示してきた。そして内定通知書に反映されるのは、その一方だけだ。

ミレニアル世代は過去10年間にわたって「未来の労働を担う世代」と呼ばれ、その次の10年間は「働き方を変えた張本人たち」として非難されてきた。そして「35歳前後で時代遅れになる」という昨今の認識は、データによって明確に否定されている。

(forbes.com 原文)

翻訳=溝口慈子

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事