Forbes JAPAN編集長編著『Forbes JAPANが選ぶ 未来をひらく言葉』から、Forbesが過去取材したビジネスリーダーたちの名言を紹介する。
正解のない時代に「未来をひらく」仕事をなし得た彼ら・彼女たちは、自らの行動からどんな言葉を紡ぎ、何を導き出したのか。「名言こを未来に伝えるべき共有物だ」をコンセプトに、リーダーたちの言葉をひもとき、われわれの「今日の行動」に転換すべく読み解くコラム。第10回の今回は、国際連合事務次長 中満泉の言葉を紹介する。
「大変な状況だけど」という言葉は、普通の「大変」とは重みが違う。29歳の時、彼女は15キロの鋼板入り防弾チョッキを着て砲撃戦が激しい旧ユーゴに赴任。「民族浄化」という凄まじい状況で、セルビア人勢力によるムスリム系女性への組織的レイプは4年間で約2万件、死者20万人、難民・避難民は200万人を超えた。ある時、避難民を乗せたトラック10台を軍が包囲し、荷台でぐったりした避難民に銃口が向けられたことに怒った中満さんは、将軍たちに対して、「通行の許可命令を出すまで、私はここを動きません!」と1時間にわたって激論を繰り広げた。
シリアでは部下をテロ組織に人質として拘束されるなど、彼女は世界中の「最悪」と格闘してきた。「でも、人間は恐怖で簡単に流されるけれど、一方で男気をもって行動するのも人間なんです」と言う。憎悪が渦巻く旧ユーゴの紛争地で、ムスリム系の女性を聞い、ムスリム狩りをする民兵たちに見つからないように、中満さんのもとに女性たちを託す人もいた。また、避難民に銃口を向けた兵士たちが、上官の命令が変わると避難民の介護を始める姿も見てきた。人間は善悪の間を揺れ動いているのだ。極限の不条理を生きてきたからこそ、「人間は小さな可能性を見つけては、それを広げていく努力ができる」と「希望」の突破口を見つけ続けるのだ。
中満泉(なかみつ・いずみ)◎国際連合事務次長。1963年、東京都生まれ。早稲田大学卒業、米ジョージタウン大学院修了。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)入所後、92年に内戦中の旧ユーゴスラビアのサラエボUNHCR事務所長代行に就任。戦火の中で人道支援や軍部との交渉に従事。国連PKO局アジア・中東部長などを経て、2017年より日本人女性として初の国連事務次長。18年、フォーチュン誌の「世界の最も偉大なリーダー50人」に選出。



