AIの世界では、昨日まで目を見張るような評価額だったものが、今日には出発点になる。高校時代からの友人2人が、アイデアもプロダクトもない状態でスタートアップ育成機関「Y Combinator(YC)」に参加してから1年半後、2人が創業したAIデータ企業AfterQuery(アフタークエリ)の評価額は32億ドル(約5130億円)に達した。
これは、AfterQueryが5カ月前に受けた3億ドル(約480億円)の評価額の10倍超にあたる。YCのパートナーであるグスタフ・アルストロマー(Gustaf Alströmer)によれば、AfterQueryは創業からユニコーン企業になるまでの期間がYC史上最速のスタートアップとなる。
これについて、AfterQueryはコメントを控えた。
関係者の1人によれば、AfterQueryは黒字化しており、リード投資家も確保した。23歳の創業者スペンサー・マティーガ(Spencer Mateega)は2026年7月、年換算経常収益(ARR)が「数億ドル規模」に達したとXに投稿した。これは4月時点の1億ドル(約160億円)からの大幅な増加となる。
サンフランシスコを拠点とするAfterQueryは、急成長するAIデータプロバイダー業界の一角を占める。同社が提供するのは、フロンティアAIラボ(最先端のAIモデルを開発している機関)が何よりも必要としている、人間によって作成・検証された「複雑な推論データ」だ。同社のデータはNVIDIAの新シリーズ「Nemotron」モデルに使われたほか、元OpenAIのCTOであるミラ・ムラティ(Mira Murati)のThinking Machines Lab(シンキング・マシンズ・ラボ)や、リーガルAIスタートアップのLegora(レゴラ)とも協業している。同業の中では珍しく、AfterQueryは中国の一部AI研究所とも緊密に連携している。
市場の状況が、その成長の速さを説明している。フロンティアAIラボは、すでにウェブ上の大半のデータを取り込んでしまった。合成データは役に立つが、限界もある。最も求められているのは、自分の仕事を理解している人々、自らの専門業務を深く理解するソフトウェアエンジニアや弁護士、金融アナリストらが作成する、領域特化型のデータだ。



