冒頭で船員の働き方に関して、船上での技術進歩や働き方改革に触れたが、実はこれはかなり最近の話だ。
海外へ向かう外航船では、一度乗船すると数か月にわたって日本を離れることも珍しくない。ところが、数年前までは「インマルサット」という地上から約3万6000kmの静止軌道にある10基ほどの通信衛星を使ってしかインターネットにはつながらなかった。
船員個人が自由に通信することは難しく、家族との対話は港に着いてからの電話かメールに頼るしかなかったのだ。
ところが、いまでは地上から約550キロメートルに数千基規模で運用されている「スターリンク」の衛星経由でネット接続ができる時代となった。動画視聴やビデオ通話にも十分な通信環境が整い、若い船員にとっても船上での孤独感から解放されやすい。
さらに、2022年には船員法などが改正され、これまであいまいであった労働時間の把握が厳格化。長時間労働者には産業医面談が制度化されるなど、船上を特別な仕事場と考えるのでなく、陸上と同様に扱われるようになった。
国土交通省の船員労働統計調査(2025年)を見ると、船員全体の平均年収は、国内で運航する船だと約720万円、海外まで行く船だと約1210万円(日本人)である。ということは、資格が必要な航海士や機関士に限ると、一般の会社員の平均年収を大きく上回る。
海に囲まれた日本で、船や港に携わる仕事の大切さが失われることは絶対にない。そう考えると、港町である神戸が、子供たちが小中学生の段階から海事教育に本気で注力する理由も、十分に理解できよう。


