オーストラリアの固有種であるコトドリ(学名:Menura novaehollandiae)の鳴き声を初めて耳にした人は、それが鳥の発する音だとはにわかに信じられないだろう。森の中で耳にする音がそっくり再現されているように聞こえるからだ。
シラヒゲドリの笛のような鳴き声や、ワライカワセミの「笑い声」、目につかない生き物の甲高い声などが、すべて一体となっているのだ。この音は実に不可思議ではあるが、聞き慣れた感じもする。さらにコトドリは、私たちヒトが発する音をまねすることもある。これを聞くと、落ち着かない気持ちになるはずだ。
コトドリは数十年にわたり、「動物界で最もものまねが上手い種」という称号を手にしてきた。これはかなり思い切った呼び名だ。しかし、この鳥に関する研究を検証すると、この称号ですら、慎重で控えめな表現に思えてくる。
コトドリが「最もものまねが上手い動物」となった理由
コトドリが他の鳥類と一線を画す理由は、単なる模倣能力の高さだけにとどまらない。声をまねることだけであれば、オウムからマネシツグミまで、有名なものも、そうでないものも含めて、この能力を持つ種はいくつも存在する。だが、コトドリが他の種と違うのは、その声まねが並外れてうまい上に、その能力を戦略的に用いている点だ。
2012年に『Animal Behaviour』に掲載された研究論文は、コトドリの声まね能力を厳密に検証している。論文著者は、コトドリによる、ハイイロモズツグミ(学名:Colluricincla harmonica)の声まねを検証した。ハイイロモズツグミは、オーストラリアで広く見受けられる鳥で、複雑で特徴的な鳴き声で知られる。
研究チームは、コトドリの声まねがどの程度うまいかに関して、知覚による認識と、音響特性という、2つの角度からアプローチした。
最初に行なわれたのは、音声の再生実験だった。もしコトドリの声まねが鳴き声の近似値にすぎないのなら、ハイイロモズツグミは、自らの種の歌声と、コトドリの声まねを聞き分けられるだろう、と研究チームは予測していた。
しかし、そうはならなかった。事実、実験の対象となった個体は、コトドリのまねた声に対して、本物のハイイロモズツグミの呼び声と同じように強烈に反応した。言い換えれば、聞き手であるハイイロモズツグミにとって、コトドリの声まねは本物として通用した、ということだ。



