コトドリの音まねは、確かに洗練度が多少高くはあるが、まさにこの枠組みにぴったりと収まる。コトドリのオスの特質として知られている、カバーする範囲が広く、精度の高いレパートリーを構築し、維持するには、以下のステップを踏む必要がある。
・幅広い種類の音にさらされている状況
・これらの音を正確に知覚し、記憶する能力
・正確な運動制御によって、これを再現する能力
・これらの音を、一貫性のあるシナリオに組み入れる能力
それぞれのステップは、コトドリの個体に対して、満たすべき条件を突きつけている。しかし全体で見ると、これらのステップは、能力の高い個体のみがクリアできる、認知および生理学上の試練と考えられる。
しかしここには、文化的な側面も存在する。コトドリは、自身の鳴き声を環境音から学ぶことから、そのレパートリーは、それぞれが置かれた場所の音のコミュニティを反映したものとなる。これはつまり、それぞれの個体の求愛ディスプレイは、生物学的に備わった要素にとどまらず、文化的に形作られるものでもある、ということだ。こうしたディスプレイは、生息環境にさまざまな音が生まれたり消えたりするなかで、時とともに自然に進化していくものだろう。
このことが、新たなフィードバック・ループの扉を開く。メスが、より複雑で目新しい求愛ディスプレイを好む場合、オスは、自らが持つレパートリーを広げ、洗練させなければならない、というプレッシャーにさらされる。これが、めぐりめぐって、未来の世代に要求される基準を上げることになるわけだ。
「実際には存在しない幻想」を創り出すという要素も、コトドリにとってプラスに働いている。さまざまな鳥が密集する状況などの、環境で発生する出来事を丸ごと模倣することで、コトドリのオスは、既存の感覚に関するバイアスを活用し、まったく新しいシグナルを一から創り出すのに必要なエネルギーを節約することができる。これは賢い戦略だ。すでにメスの注目を引くことができるシグナルを利用できるのに、一からシグナルを進化させる必要があるだろうか?
コトドリについて知れば知るほど、この鳥をカテゴライズするのは難しくなる。ものまねの達人であり、パフォーマーであり、音の風景を操作する能力を備えているからだ。周囲の環境をコピーしているだけだ、と言う者もいるかもしれない。しかし現実には、コトドリはまねをすると同時に、環境を解釈し、作り変えている。そしてそれを、ストーリーを語るために使っている。研究結果が正しければ、そのストーリーは、世代を超えて受け継がれ、最も重要な聞き手であるメスを魅了するべく磨かれ続けているのだ。


