【重要】Forbes JAPAN サイトメンテナンスのお知らせ(2026年11月10日(火)18:00〜)

サイエンス

2026.11.07 18:00

動物界最強の「ものまね王」コトドリがチェーンソーや赤ちゃんの声を再現する理由

stock.adobe.com

BRANDVOICE | Paid Program

もっと見る>

言い換えれば、コトドリのオスは、気まぐれに音を模倣しているわけではない。オスたちは自らの歌で、彼らが暮らす環境にありそうな、迫真に迫ったシーンを積極的に再現している。ここで残る疑問は、なぜそんなことをするのか、という点だ。

advertisement

研究チームはその理由について、この鳴き声の模倣に、捕食者を避けようとするメスのコトドリの本能をかきたてる効果がある、という説を提唱している。捕食者に関連する出来事(このケースでは、通常は危険が迫っていることを示す、さまざまな種の鳥が入り乱れた警戒音のコーラス)を模倣して再現することで、オスはメスの注意力を高め、警戒状態へと導くことができる。野生の環境では、こうした複数の種が入り乱れた呼び声が無視されることはほぼありえない。これは、多くの情報を含む、緊急対応を求める合図だからだ。

ゆえに、求愛ディスプレイのなかでこのような音のシナリオを再現すれば、オスは、やりとりのなかで行動を喚起する文脈を、自らの声で操作できる。オスは、メスにとって重要、あるいは注意を向ける価値があると感じられる瞬間に、求愛ディスプレイを挟んでいるわけだ。

一つの説としては、このように覚醒度が高まった状態においては、メスは、その後にオスが見せるしぐさに対して、より注意を払うようになる、という可能性が考えられる。また、別の説としては、オスの行動が、感覚に備わった既存のバイアスを利用している、という可能性も考えられる。つまり、すでに意味を伝えるシグナルを活用することで、ゼロから新たに注意を喚起する必要がなくなる、ということだ。いずれにせよ、こうした説を知れば、音の模倣は単なる飾りではなく、より戦略的な行動として捉え直されることになる。

advertisement

精巧な模倣能力を獲得した進化のメカニズム

詳しい事情を知らない人には、コトドリが持つレパートリーは過剰に思えるかもしれない。数え切れないほど多くの鳥が、よりシンプルなシグナルを用いていて、それで問題がないのに、これほど複雑な模倣の術が有利になるように進化が働いたのは、なぜなのだろうか?

この疑問の答えには、どうやら性選択の力学が関連しているようだ。性選択においては、単なるコミュニケーションを越えて、ライバルとの競争や求愛相手の説得において、シグナルが大きな意味を持つ。

多くの種では、オスは、交尾相手を引きつける美しい形質を進化させる。鮮やかな色彩の羽毛や、精緻なダンス、複雑な歌声などがそれにあたる。鳥の世界では、これらの形質は、求愛者としてのオスの質の高さを示す、嘘偽りのないシグナルとして機能する。これらの形質は、高いコストを伴い、偽るのが難しいため、交尾相手としてふさわしいという情報を示すものとなる。

次ページ > コトドリはまねをすると同時に、環境を解釈し、作り変えている

翻訳=長谷睦/ガリレオ

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事