次に、研究チームはさらに踏み込んで、鳥が発する音そのものの音響的構造を分析した。これらの分析によって、構造と複雑性の両面で、コトドリの声まねが、本物の鳥の歌声に驚くほど似通っていることが裏付けられた。コトドリの発する声は、本来の鳥が発する音の本質的な構造を、顕著な正確さで保持していた。
しかし研究チームは、本物のハイイロモズツグミとコトドリの鳴きまねの違いを決める、ある要素を突き止めた。コトドリは特定の要素について、本物と比べて、繰り返す数が少ない傾向にあったのだ。研究者は、これをトレードオフと解釈した。ある特定の種の呼び声を、すべてのディテールに至るまで完璧に再現する代わりに、コトドリは、まねをする声の種類を増やすことと、正確に表現することのあいだでバランスをとるように進化したということだ。つまり、一部の要素については省略することで、他の多くの種のまねを可能にする余地を設けてレパートリーを増やした、と考えられる。
これがまさに、コトドリの模倣者としてのレベルを上げる要因だ。他の動物をまねできる動物は数多いが、コトドリほどの多様性と正確性を併せ持つ種はほとんどいない。コトドリは、数十もの種の声を統合し、ひと続きのパフォーマンスにしている点で、他の種から抜きん出た存在になっている。
こうした研究室での分析以外にも、コトドリのレパートリーが、自然界に限定されていないことを示す観察例からのエビデンスは豊富に存在する。例えばコトドリが、自らのディスプレイ行動に、人間が作り出した音を加えている例が記録されている。こうした音には、チェーンソーやカメラのシャッター音、車のアラーム音、エンジン音、さらには子どもの泣き声や、人の発話の断片なども含まれる。そして多くの事例で、まねされている音は、リズムやトーン、機械特有の一定の調子などの面で、気味が悪いほど元の音に似ている。
ただし、こうした事例が発生するのは、人間と非常に近い距離で暮らしている個体の場合がほとんどだ。つまり、飼育されていたり、人が頻繁に訪れる生育地にすんでいたりすることが多い。こうした環境においては、人間が創り出す音は繰り返し発され、コトドリが学習に使うことができる。重要なのはまさにその点だ。
コトドリは、「自然音」を「人工音」より優先することはないように見える。つまり、その個体が生息する環境を満たす音があれば、何でも吸収してコピーする、いわば日和見的な音声学習者として暮らしている。
この意味でコトドリの模倣は、彼らが暮らす環境を、それが、木が生い茂る森であれ、人間の存在感が増している場所であれ「音でマッピングする」という役割を果たしている。


