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2016.06.08

プリンスは依存症患者たちを救えるか──その死から学べること

Prince photo by Kevin Mazur / gettyimages

オピオイド系鎮痛剤の乱用が年々増加するなか、残念ながら米国では人気ミュージシャン、プリンスと同じ原因で死亡することがまったく珍しいものではなくなっている。多くの家族や友人たちは愛する人を失った悲しみに加え、鎮痛剤への依存症を不名誉な事と決めつける人たちから不当な扱いを受けてきた。プリンスの死から私たちが学べることがあるとすれば、それは「依存症は人を選ばない」ということだ。

プリンス・ロジャーズ・ネルソン(57)は今年4月21日、強力な鎮痛剤「フェンタニル」の過失による過剰摂取で死亡した。フェンタニルの鎮痛作用はモルヒネの80倍、ヘロインの数百倍も強力だといわれている。

80年代からボディガードを務めてきたウォレス・サフォードをはじめ、親しい間柄だった人たちによれば、プリンスは音楽以外にほとんど関心を持たず、薬物どころか飲酒の習慣さえない“クリーンな”生活を送っていた。

「オピオイドの正しい処方を推進する医師の会」のアンドリュー・コロドニー理事長はプリンスについて、「オピオイド系鎮痛剤の過剰摂取で命を落としたその他の多くの人たちと同じように、依存症によって死亡した。ハイになることを目的に薬物を利用する、いわゆる乱用者ではなかった」と話している。

米国立衛生統計センター(NCHS)によると、米国では2014年、処方薬として購入できるオピオイド系鎮痛剤の服用に関連して死亡した人の数が前年比16%増加。1万8,893人に上った。また、フェンタニルなど合成オピオイドによる死者は同年、前年比79%増加した。
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編集 = 木内涼子

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