これはプレビューです
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2026.08.31 16:00

「AI×地政学」が企業のGX戦略を再定義する──「ASUENE SUSTAINABILITY SUMMIT 2026」で見えた次の一手

AIによる電力需要の急増、地政学リスクの高まりなど、企業を取り巻く環境が大きく変化するなか、経団連後援の日本最大級のサステナビリティイベント「ASUENE SUSTAINABILITY SUMMIT 2026」が開催された。産官学のリーダーたちは、どのような未来を示したのか。


企業の脱炭素・ESG経営を一気通貫で支援するアスエネが主催する国内最大級のサステナビリティ関連イベント「ASUENE SUSTAINABILITY SUMMIT 2026」が7月23日に虎ノ門ヒルズフォーラムで開催され、オンライン含め約2,000人が参加した。「AIと地政学リスクが再定義するサプライチェーンとGX戦略」をテーマに、GXを牽引する有識者や官公庁、先進企業が一堂に会し、脱炭素、エネルギーの最新トレンドや先進事例が共有された。

何も考えていないことが許されない時代

特に注目が集まったのは、ふたつの特別セッションだ。ひとつ目は「『AI×エネルギー』と日本経済・GXへのインパクト」と題し、東京大学大学院工学系研究科教授の田中謙司とアスエネ Founderで代表取締役CEOの西和田浩平が登壇。Forbes JAPAN編集長の藤吉雅春をモデレーターに、AI時代のエネルギー戦略や、日本企業がGXを競争力へと転換するための条件について意見を交わした。

西和田によれば、人口減少で縮小が見込まれていた日本の電力需要は、AIやデータセンターの拡大により一転、今後は増加へ転じる見通しだという。ところが日本は、電源構成の約7割を輸入化石燃料に依存する火力発電が占め、エネルギー自給率は約13%と低い。「無駄な電力消費やCO2排出の抑制は喫緊の課題です。エネルギーコストが上昇するなか、AIを活用したエネルギーマネジメントも有効です」と西和田は指摘する。

西和田浩平 │ アスエネ Founder 代表取締役CEO
西和田浩平 │ アスエネ Founder 代表取締役CEO

これを受けて田中は、エネルギー価格の変動推移を踏まえ、再生可能エネルギーを取り入れたポートフォリオを提唱した。

「多くの会社がその瞬間に最も安いエネルギーを購入する戦略をとっていますが、今後ホルムズ海峡の封鎖が常態化する可能性もあります。太陽光などの再生可能エネルギーである程度コストを固定化し、残りをどうするかを経営陣が考えるべきです。何も考えていないことが許されない時代が来るのではないかと思っています」

また、西和田は世界の環境規制の動向を紹介。各国が規制を強化する一方、トランプ政権下の米国では逆行する動きも見られる。しかし、カリフォルニア州ではEVや蓄電池の導入が加速するなど、州単位で対応や環境が異なる現状を指摘した。

田中 謙 │ 東京大学大学院工学系研究科 教授
田中 謙 │ 東京大学大学院工学系研究科 教授

田中も「サステナビリティ開示基準や規制は長年議論を重ねたものが実行されるので、短期間で大きく方向転換することはない」と同調したうえで、環境施策は、産官学連携で取り組んでいく必要性を訴えた。

「複数のシナリオを設定しながらシミュレーションを行い、どの施策が最も効果的かを見極めることが重要です。こうした取り組みは、市場設計や制度設計も含め、多様な企業や行政、研究機関が参加するエコシステムを構築し、幅広い関係者を巻き込んで議論を深めなければなりません」

セッション後には、西和田が総額135億円の資金調達と、欧州のサプライチェーンCO2可視化プラットフォームの最大60億円での買収を発表。「AIサステナビリティ統合カンパニー」の構想を披露した。

「ASUENE SUSTAINABILITY SUMMIT 2026」のセッション「『AI×エネルギー』と日本経済・GXへのインパクト」の様子。
「ASUENE SUSTAINABILITY SUMMIT 2026」のセッション「『AI×エネルギー』と日本経済・GXへのインパクト」の様子。

脱炭素は環境活動ではなく「経営課題」

特別セッション2では、「サプライチェーンの再構築が実現する脱炭素と持続可能性」と題し、東京大学未来ビジョン研究センター副センター長・教授の江守正多、三菱重工業カーボンニュートラル推進室長の森原雅幸、村田製作所技術・事業開発本部シニアマネージャーの森永泰弘が登壇。モデレーターは同じく藤吉が務めた。

冒頭、江守は気候変動の現状について説明。パリ協定以降、平均気温上昇を1.5℃以内に抑える目標が共有されてきたが、世界平均気温はすでに産業革命前から約1.4℃上昇し、2030年ごろには1.5℃へ到達すると予測されている。


CO2除去などの技術が検討されるなかでも、江守は「いろいろ考えたとしても、一刻も早く世界の脱炭素化を進めなければならないということ自体は何ら変わらない」と強調した。

そうした脱炭素化をまさに推進しているのが三菱重工業と村田製作所であり、ふたりが自社の取り組みを紹介した。製造業にとって高いハードルとなるのは、自社だけでなく、サプライチェーン全体の排出量を削減するスコープ3への取り組みだ。村田製作所では、排出量の約8割がスコープ3であるため、サプライヤーに対して毎年、気候変動への取り組みや方針について説明し、排出量を把握していない企業には算定支援も行っているという。

三菱重工業は発電設備などを多く手がけるため、スコープ3の排出量は約11億6,000万トンにも上る。そうしたなか、森原は、脱炭素を環境活動にとどめず、化石燃料高騰やサプライチェーン分断に備え、生産性向上や企業体質強化につなげる経営課題としてとらえる必要性を指摘する。

「ホルムズ海峡をめぐる情勢次第では、化石燃料を輸入できない事態もありえます。脱炭素を環境問題だけでなく、経営に直結する課題としてとらえ直さなければなりません。サプライチェーンも同様です」

一方、森永は再生可能エネルギー活用を進めるにあたって、「プロシューマー」という発想を提唱した。

「再生可能エネルギーというと、電力会社など供給する側である『プロデューサー』の仕事と捉えられがちです。しかし、電力を使う側である『コンシューマー』も、その役割を担う必要がある。だからこそ私たちは、電力を『つくる側』と『使う側』の両方の役割を担う『プロシューマー』という欧州発の考え方を広めていきたいと考えています」

脱炭素への対応は一部の大企業だけのテーマではない。サプライチェーンを構成する企業にも、エネルギーコストや供給リスクに強い事業体質をつくることが求められている。その現実的な課題に向き合いながら、両社はそれぞれの事業特性に応じた脱炭素への取り組みを進めている。

同サミットのセッション「サプライチェーンの再構築が実現する、脱炭素と持続可能性」の様子。
同サミットのセッション「サプライチェーンの再構築が実現する、脱炭素と持続可能性」の様子。

基調講演もふたつ行われた。ひとつ目は「日本のGX戦略のグランドデザイン」と題し、前環境大臣で参議院議員の浅尾慶一郎が登壇した。浅尾は、2050年カーボンニュートラルの実現は環境政策にとどまらず、日本の経済成長とエネルギー安全保障を実現する国家戦略であると強調。日本が強みをもつ人工光合成やバイオマス発電、核融合などの革新技術への投資を進めることで、「地球規模の課題解決と日本の潜在成長率向上を実現させる」と自信を示した。

ふたつ目では「サステナビリティを取り巻く“変化”」と題し、三井住友フィナンシャルグループ執行役員グループCSuOの髙梨雅之が登壇した。髙梨は、サステナビリティは「理念を掲げる時代」から「社会全体で実行する時代」へと移行したと指摘。「サステナビリティは企業価値を左右する経営課題になった」と言及したうえで、SMBCグループとしても資金提供にとどまらず、企業の持続可能な成長を伴走支援していく考えを示した。

当日は、ほかにも日本を代表するさまざまな企業のリーダーが登壇し、それぞれの取り組みを紹介。サステナビリティが、経営を左右する競争戦略となるなか、本サミットは、その現在地と未来を示す場となった。



アスエネ │ ASUENE
https://asuene.com/

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Promoted by ASUENE │ text by Fumihiko Ohashi │ photographs by Masahiro Miki │ edited by Akio Takashiro