サイエンス

2026.06.21 18:00

人類はたった「1種類の食べ物」だけで生き続けられるのか? 雑食に進化した理由

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18世紀の英国の船乗りを思い浮かべてみてほしい。大西洋を横断する航海に乗り出して6カ月が経ったところだが、体の節々が痛み、歯茎から出血し、歯は今にも抜けそうだ。

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とはいえ、この船乗りは餓えで死にかけているわけではない。塩漬け肉と堅パンで、腹は満たされている。瀕死になっている理由は、たった一つの化合物が欠乏しているからだ──それはビタミンCだ。

ビタミンC欠乏で生じるこの病気「壊血病」は、人類にとって、生物学的に最も示唆に富む教訓の一つだ。食べるものの量は、この病気の発症と何の関連もない。当時の船乗りたちも、適量は食べていた。しかし、取っている食事が誤っていたのだ。「人体が自分では生成できない化合物」がまったく含まれていないメニューをずっと食べ続けたことが、病の元凶となった。

臨床医学の論文によると、人体は、アスコルビン酸(ビタミンCの化学名)を体内で合成するのに必要な遺伝子(GLUO:グロノラクトン酸化酵素)を持たない。ゆえに、ビタミンCが含まれていない食事を1~3カ月にわたって取り続けると、体内に蓄えられたビタミンCが完全に尽きてしまう恐れがある。すると、あざができる、出血する、傷の治りが悪くなるといった症状が確実に発生する。この病気の治療は、レモンを与えるといった簡単な方法で済むことが、経験則で判明している。

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壊血病をめぐるこの物語は、さらに深い疑問へとつながる完璧な出発点になる。すなわち、人はたった1種類の食物を長期にわたって取っていて、生き続けることができるだろうか? という疑問だ。

その答えは、端的に言えば「ノー」だ。しかし、この答えに至る理屈には、簡潔な結論よりはるかに興味深いものがある。

人間の食事に不可欠な、9つの必須アミノ酸

われわれ人間が生物として必要とする物質の幅は、驚くほど狭い。タンパク質に関しても、適切なタイプのタンパク質を必要としており、何でもいいというわけではない。人間のタンパク質合成には20種のアミノ酸が必要とされ、そのうち以下の9つが必須アミノ酸に分類されている。

1. ヒスチジン
2. イソロイシン
3. ロイシン
4. リシン
5. メチオニン
6. フェニルアラニン
7. トレオニン
8. トリプトファン
9. バリン

これら9つのアミノ酸が「必須」とされるのは、人間やその他の哺乳類の細胞には、これらのアミノ酸を十分な量作り出すのに必要な代謝経路が欠けているからだ。そのため、毎日欠かさず食物から摂取する必要がある。

重要なのは、これらの必須アミノ酸が欠乏したとしても、即座に顕著な症状が起きるとは限らないことだ。その影響はむしろ、体のだるさや、頭に霧がかかったような認知機能の低下、免疫能力の低下、組織の修復能力の減衰といった、曖昧な不調という形で徐々に現れ始める。成長期の子どもの場合は、発育不全につながる。

問題は、これら9つの必須アミノ酸や、適切な量のビタミンやミネラル類、脂肪酸、食物繊維を、生涯にわたって大人の人間の体に必要な割合で提供してくれる食物が単独では存在しないことだ。

この条件をかなりの部分満たしているものとして、母乳がある。これは確かに、急速に成長を続ける、生まれたばかりの子どもを支えるためにあるものだ。しかし母乳は、乳児を成長させる目的に特化しており、成人の健康は維持できない。

もう子どもとは言えないわれわれにとって、必要な物質は明白だ。人間は、雑食となることをいわば義務付けられている。多様な食生活は、個人の好みではなく、絶対に必要な条件なのだ。

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翻訳=長谷睦/ガリレオ

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