有名スイーツなども届ける「神対応」
これを調整したのは、MICE誘致と支援の専門部隊である「神戸コンベンションビューロー」(神戸市の外郭団体である「神戸観光局」の一組織)だ。そこでこの道16年という勝利哲也、昨年4月からこの仕事に携わる本田雅也の2人から話を聞いた。
本田に聞くと、彼の着任前となる学会開催の2年前から施設側と神戸市の担当部局への相談は始まっていたという。今回も交渉の末に利用が実現した。神戸市の職員に「この日程で6時から」と依頼したときは、「えっ、朝のですか?」と驚かれたという。
このような受け入れ側の「神対応」は、整形外科学会だけの「特別扱い」ではない。さらに言うと、医学系学会にも限られていない。むしろ戦略としての「投資」であり、宿泊や飲食という形で確実に街に利益を還元させる算段があるから、関係する人たちでの街ぐるみのスクラムが実現している。
他の神対応としては、神戸の有名スイーツ店のシェフを会議場に招いて、日替わりメニューをカフェタイムに届けることもある。
一方で、学会として期間中に市民向けの啓発講座をする際は、神戸市内で80万ほどの全世帯に配布している広報紙にPR記事を掲載するという。外部の学術団体が市民向け広報ツールを利用できるのは、かなり異例だ。
実は日本整形外科学会が最初に学術集会を神戸で開いたのは1974年で、50年以上前にさかのぼる。いまは同学会の学術大会は東京、横浜、福岡と神戸で持ち回りなので4年に1回の開催となるが、神戸ほど会議場から車で30分圏内にスポーツ施設が全て揃えられている都市は他にないそうだ。たしかに、午前8時から学術集会自体の発表などが始まることを考えると、会議場からの所要時間はとても大事な条件だ。
興味深いのは、ノエビアスタジアムなど各施設の担当者の受け止めようだ。はっきり言って彼ら彼女ら施設側には過度な負担を強いることになる。だが、朝6時がキックオフなら、5時頃に出勤して準備を始めるのは、契約上の義務の枠外だ。ただ、あの日の朝に筆者が会ったスタジアムの職員からは、おもしろいエンタメに自らも参加しているように思えた。
最後に本田は、「苦労はありますが、やりがいはあります。ホテルの客室が埋まって、飲食店が確実に潤う。目に見える効果を感じます」と断言する。
そして、続くこの道16年のベテランである勝利哲也の言葉が胸に刻まれた。
「神戸は1868年の開港から新規なことを取り入れて発展した街。いまの神戸は、宿泊や飲食から、海や山といった自然などまで何でもそろっています。歴史的な立ち位置から学会のような最新の知見を交換する場にもぴったりです」
このような学会関係者たちの心を掴んで離さないホスピタリティに、神戸の街や人々が持つ「底力」を、垣間見たような気がした。
連載:地方発イノベーションの秘訣
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