木星の氷衛星エウロパから水蒸気のプルーム(間欠泉)が周期的に宇宙空間に噴出しているとする先行研究の主張に、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)の観測データ10年以上分を分析した最新の研究が疑問を投げかけている。
米サウスウエスト研究所(SwRI:Southwest Research Institute)などの研究チームが、HSTの紫外線観測データ14年分を再調査したところ、水蒸気プルームの存在を示す証拠の信頼性が著しく低下した。この最新研究は、過去の観測データが水蒸気噴出の明確な兆候ではなく、統計的な不確実性(ノイズ)に影響された可能性があることを示唆するものだ。今回の研究結果をまとめた論文は天文学誌『Astronomy & Astrophysics』に掲載された。
これは、エウロパにプルームが存在し得ないということではなく、最新の分析によって当初の結論の確実性が低くなることを意味するにすぎない。
画期的発見を再考
エウロパは長年、科学者を魅了している。隆起帯や筋状溝が縦横に走る、地質学的に活発な「カオス地形」の氷殻の下に、広大な塩水の海があると考えられているからだ。もし水蒸気プルームが存在すれば、厚さ数十kmの氷を掘削せずにエウロパの内部海の物質を調査する絶好の機会が得られるかもしれない。ただし、その検証には探査機による直接のフライバイ(接近通過)観測が必要不可欠となるだろう。
天文学者チームによる2014年の研究では、HST観測データの分析に基づき、水素原子に関連する特定の波長の紫外線「ライマンアルファ輝線」によって微かなプルームの痕跡を検出したと報告した。エウロパ表面から流出している水蒸気が、宇宙空間で水素と酸素に分離している可能性があることを、この観測データは示唆していた。
証拠が弱まる
だが、今回の研究によると、当初のデータ分析はHSTの性能を限界まで引き出すものだった。2014年に発表された最初の論文と、今回の再分析論文の両方の共同執筆者であるSwRIのカート・レザフォードは「エウロパに水蒸気プルームが存在する証拠は、当初理解されていたほど強固ではなくなっている」と指摘した。



