韓国・ソウルの学生街として知られる弘大入口や新村、梨花女子大のある市内中心部から地下鉄で20分ほどの駅を下車し、通りを挟んだ高架通路を渡ると、そこには別世界が広がっていた。
そこはまぎれもなくソウル市内だが、筆者のよく知る中国の一地方の光景そのものだった。
5月下旬、筆者が訪ねた大韓民国ソウル特別市の南西部、永登浦区(ヨンドゥンポグ)大林洞(テリムドン)という街について、韓国観光公社のサイト「VISITKOREA」は次のように説明している。
<大林洞にある大林中央市場(대림중앙시장)は、韓国の中の小さな中国と呼ばれ、朝鮮族、中国人、韓国人の人々が共存する市場。 市場では農水産物、雑貨など一般の市場とさほど変わらないものばかり販売されていますが、市場内に中国の人々が経営する飲食店が多く、また本場・中国の屋台料理が味わえるなど、様々な中国グルメも楽しむことができます>
マーラータンの流行に見られるように、最近の韓国の食のトレンドで、特に日本の若い女性世代への影響力の大きさに、筆者はかねてから驚いていた。いったい韓国のいまの食のシーンはどのようなものなのか。とはいえ、オールジャンルを追うのは大変なので、ガチ中華の世界を一度訪ねてみたいと思っていた。
渡航前に韓国グルメの専門家や現地通の友人にレクチャーしてもらうと、まず訪ねるべきは、ソウルでガチ中華が多数出店している街として知られる大林と加里峰(カリボン)だということだった(他にもあるが、今回はこの2つの町に絞ることにする)。
これまで何度も述べたように、ガチ中華の出現は、1980年代以降の中国人の大量出国がもたらしたもので、世界各国でグローバルに見られる現象である。
以前モンゴルの首都ウランバートルのガチ中華(「モンゴルでも急増、中国人の大量出国が生んだ「ガチ中華」の世界的トレンド」)をウォッチングしたことがあるが、ソウルでも想像以上の発見があった。
韓国の普通の街のことには詳しくない筆者も、ハングルと中国語簡体字が併記されている大林のような街であれば、もしかしたら、地元のソウル市民より、そこで何が起きているのか、よく理解できるかもしれない。
そう考え、大林とそこから2キロほど離れた加里峰で筆者が目にした、およそ日本では考えられないソウルのガチ中華タウンの姿についてレポートしたいと思う。



