AI

2026.06.02 13:00

バイトダンスがAI事業を30%削減、中国AIアプリ市場が数撃ちゃ当たる戦略を放棄した理由

Tada Images - stock.adobe.com

Tada Images - stock.adobe.com

ここ数週間、ByteDance社内で広く共有されたアップデートが、衝撃的な決定を明らかにした。同社はAIアプリケーションプロジェクトの約30%を削減し、かつて中国のモバイルインターネット戦略の代名詞だった大量のプロダクトを乱発する戦略(「数撃ちゃ当たる」方式)を明確に放棄したのだ。

advertisement

これは資本、実験、熱狂によって一度膨張した中国のAIアプリケーションレイヤーが、構造的なリセット局面に入ったことを示す初期シグナルである。ある業界アナリストはこう語る。「モバイルインターネット時代の拡大ロジックは、AI時代にはもはや通用しない」

成長を罰するコスト構造

最も示唆に富むのは、財務面のディテールだ。

ByteDanceの2025年のAI推論コストは80億人民元(約1890億円)を超えたと報じられている。これはAI製品からの増分収益の約2.3倍に相当する。ある幹部は問題を端的にこう要約した。「この資金消費ペースでは、もう1つの「Doubao(豆包)」のような大規模アプリを作ることは不可能だ」

advertisement

根底にある力学は、直感に反するものだ。モバイルの時代には、規模が収益性を押し上げ、ユーザー増加が加速するにつれて限界費用はゼロに近づいた。だがAIでは、クエリが1件増えるたびに実際の計算コストとストレージコストが発生する。モバイルインターネット時代にはコストの大部分がユーザー端末側に転嫁されていたのに対し、AIではその負担がプロバイダー側に集中する。成長は損失を深めるのだ。

この逆転現象は、ByteDanceが「DAU(日次アクティブユーザー数)1000万人超のAIアプリを3本立ち上げる」という目標を掲げながら、AI動画、文章作成、教育ツールに数十億元を投じても成功がゼロに終わった理由を説明する。その後のDoubaoの有料モデルへの移行と人員削減は、同じ結論を明確に示している。ユーザー数を無差別に拡大することは、もはや持続可能な道ではないのだ。

旧来の戦略が破綻した理由

過去3年間、中国のテック大手であるTencent、Alibaba、Baidu(百度)は、おなじみの戦略を踏襲してきた。数十のプロダクトを並行して投入し、ヒット作の誕生に賭けるというものだ。このロジックはスーパーアプリの時代には機能した。しかしAIでは、3つの構造的理由により破綻する。

第一に、推論コストは利用量に比例して増大する。ソーシャルプラットフォームと異なり、規模が大きくなっても「無料」のユーザーは存在しない。

第二に、基盤モデルがアプリケーションレイヤーを飲み込みつつある。スタートアップが今日AIライティングツールを構築しても、数カ月以内に同じ機能がChatGPT、Claude、あるいは中国のMoonshot AI(月之暗面)が開発したAIアシスタント「Kimi」にネイティブ統合されてしまうかもしれない。あるアナリストは「今日構築したものは、6カ月以内に基盤モデルに吸収される」と述べている。

第三に、ユーザーの乗り換えコストが崩壊した。AIツール間の移動は摩擦がほとんどない。ソーシャルグラフも、データエコシステムによる囲い込みもない。ロイヤルティは薄く、リテンション(継続利用)は脆弱だ。

これらの力学が合わさり、従来のネットワーク効果は解体されつつある。DAUが高いことは、もはや防衛力を保証しない。まして持続可能性は言うまでもない。

次ページ > AIにおけるネットワーク効果は消えたのではないが……

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事