アジア

2026.06.01 07:00

「ルピー安」が映すインドの窮状 トランプ関税やイラン情勢で打撃、AIブームにも乗れず

stock.adobe.com

stock.adobe.com

「イランをめぐる武力紛争が早く終わってほしいと切に願っている国」リストをつくれば、インドは間違いなく最上位近くに入るだろう。

advertisement

インドほど大きく足をすくわれた国は少ない。今年初めごろ、ナレンドラ・モディ首相率いる与党のインド人民党(BJP)は、成長とインフレが理想的な状態で両立しているとして、いわゆる「ゴルディロックス(適温)」経済にあるとことほいでいた。

いまから振り返ると、それは希望的観測にすぎなかった。インドルピーは2025年に約5%下落し、アジアで最もパフォーマンスの悪い通貨となっていたが、今年もこれまでにさらに5%ほど下げている。ゴルディロックスという楽観論はすっかり色あせてしまった。

たしかに、米国とイスラエルによるイランに対する攻撃は、モディ政権にとって予想外の出来事だったのかもしれない。そのあおりで原油価格が急騰し、4.1兆ドル(約650兆円)規模のインド経済が危険にさらされるという事態も想定外だったのだろう。しかし一方でBJPには、このエネルギーショック以前からインドが抱えていた「持病」を治すために、およそ12年間の政権担当期間が与えられていた。

advertisement

持病とは、経常赤字と財政赤字という「双子の赤字」のことだ。そして、これはいまルピーを危機にさらしている。2025年初めにドナルド・トランプ米大統領が始めた貿易戦争、いや、さかのぼれば2017〜21年の第1次トランプ政権でも仕掛けられた貿易戦争は、インド政府にとって十分な警鐘になっていたはずだ。だが、足元のルピー相場は対ドルで史上最安値圏に沈んでおり、1ドル=96ルピー台へさらに下がる可能性もある。

ノムラのアナリストらの指摘は、多くの市場関係者の見方を代弁している。彼らはインドの慢性的な収支不均衡について「より不安定な世界環境」を反映したものとしつつ、「インドが向こう数年間、対外部門をどう管理していくかについて、より根本的な見直しが求められている」と述べている。つまり、この問題は簡単には消え去りそうにない。むしろ、中東情勢が泥沼化し、現在の曖昧な表現の「停戦」が崩壊すれば、インドの問題はさらに悪化するおそれがある。実際、その蓋然性はかなり高いだろう。

次ページ > AIブームに取り残され、台湾に時価総額で抜かれたインド

翻訳・編集=江戸伸禎

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事