女子サッカーとユースアカデミー
一方、女子サッカーは1972年のタイトルナイン(教育改正法第9編)成立後に米国で成長した。これにより米国女子代表は、世界のサッカー伝統国の多くに先んじる存在となった。その結果、米国は4度(直近は2019年)世界王者に輝いている。2023年大会ではスペインが初優勝を果たしたが、通算4勝の米国は依然として世界最多の優勝回数を誇る。
MLSも、過去15年間で状況を大きく改善してきたことは評価に値する。現代のMLSアカデミーはほぼ無料で、欧州クラブの仕組みに近づきつつある。ニューヨーク・レッドブルズ、フィラデルフィア・ユニオン、FCダラスといったクラブは高水準の才能を輩出してきた。育成プラットフォームであるMLSネクストの発展も、ユースからプロへ至る道筋をつくっている。その結果、より多くの10代の米国人若手選手がキャリアの早い段階で優れた指導と出場機会を得られるようになってきた。
こうした前進は、現世代の米国選手に表れている。欧州トップリーグでプレーする米国代表選手は、過去のどの時点よりも増えた。選手たちの技術レベルは、10年前と比べても劇的に向上している。
それでも欧州との構造的な格差は残る。大きな障壁の1つは規模だ。欧州の主要国には、ユース育成システムと結びついたプロクラブが何百と存在する。一方、米国には広大な国土に対して、十分な資金を持つアカデミーがまだ少ない。
他の障壁としては、米国のスポーツエコシステム全体でエリートアスリートの獲得競争が熾烈を極めていることが挙げられる。サッカーが圧倒的に人気のある国々とは異なり、米国では最も優れた若手アスリートの多くがNBA(バスケットボール)やNFL(アメリカンフットボール)、野球に向かう傾向がある。これらの競技のほうが文化的な威信が高く、大学の奨学金を得られる機会も多く、経済的な見返りも大きいからだ。また、サッカーにおいては男子の大学サッカーのシステムが世界基準に比べて依然として見劣りする。そのため近年は、エリート級の国際的な有望選手は大学を経由せず、直接MLSや欧州に進むケースが増えている。
それでも楽観材料はある。米国、カナダ、メキシコの3カ国共催で2026年6月に開幕するFIFAワールドカップを前に、投資は急速に拡大している。MLSの拡張、アカデミーの改善、無料の育成イニシアチブが、障壁を少しずつ下げつつある。
今後の最大の課題は、米国サッカーが「参加の経済」から真の育成エコシステムへ完全に移行できるかどうかである。これら2つのインセンティブが一致しない限り、米国は「そこそこ強いチーム」を作り続けることはできても、最大限の潜在力を実現することはないだろう。


