火星人の最大の技術革新はその通信システムにある。ロシア側によると、このドローンはデジタルモデムを搭載しており、非標準の暗号化信号によって2.4GHz帯や5.8GHz帯の民生用Wi-Fi通信に自機の通信を隠蔽しているとされる。これはおそらく、カオス暗号のような方式を通じて、ほかのWi-Fi通信に信号を紛れ込ませているということだろう。ロシア側はまた、火星人はメッシュ無線を利用しているとみている。各火星人が他機の通信中継機として機能し、ロシア側の前線後方に隠密の通信ネットワークをつくり出す仕組みだ。
そのため、このドローンは探知されず、ジャミングも受けず、移動目標を確実に見つけ出して攻撃を加えることができる。小火器を集中的に用いても撃墜するのは難しく、魔女の槌によれば、有効な防御手段と言えるのはヨールカ迎撃ドローンだけだという。ただし、ヨールカの目標追尾は理想的な条件下でしか十分に機能せず、逆にその操縦士が火星人に狙われるおそれがあるとも指摘されている。
The interception of a Ukrainian Hornet middle-range strike UAV with Yolka interceptor drone by a Russian soldier.
— Status-6 (War & Military News) (@Archer83Able) May 20, 2026
Yolka doesn't possess a warhead and bases on kinetic impact when engaging enemy drones. pic.twitter.com/8XFORgbuGV
「ヨールカは悪天候では自動ロックオンに失敗することがあり、その場合、操縦士がホーネット(火星人)に攻撃されることもあり得る。残念ながら、こうした状況は珍しくない」(魔女の槌)
そして当然ながら、ヨールカのような迎撃ドローンは主に前線に配備される。約80km後方を走るトラックはこうした迎撃手段による防御も手薄になる。
火星人の正体
魔女の槌の投稿にも名前が出ているように、ウクライナのメディアは火星人の正体を米Swift Beat(スウィフト・ビート)製の「Hornet(ホーネット)」と特定している。スウィフト・ビートは以前はProject Eagle(プロジェクト・イーグル)と呼ばれ、現在はPerennial Autonomy(ペレニアル・オートノミー)に改称されているらしい。当初はWhite Stork(ホワイト・ストーク)という名前だったこの事業は、元グーグルCEOのエリック・シュミットが立ち上げたものだ。
シュミットは2023年7月、米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)に「The Future of War Has Come in Ukraine: Drone Swarms(日本語版タイトル:ウクライナで見た戦争の未来)」と題した記事を寄稿した。彼はそのなかで、大量の低コストドローンが戦争をどのように変容させつつあるかについて論じ、「戦争の未来はドローンによって方向づけられ、遂行される」と言い切った。また、ウクライナでの戦争でドローンがすでに大きな影響を与えていることを説明しつつ、この戦争を「将来の戦争に関する明らかな警告」と捉え、すべての国はドローン時代への備えを始める必要があると説いた。


