公共交通機関、中でも地下鉄の駅構内などに展示されるアート作品は利用者にとって、移動をより豊かなものにすると同時に、「場所の感覚」や「共同体意識」を与えてくれるものだ。
その点で最も有名なのは、「地下宮殿」と呼ばれたモスクワ地下鉄(モスクワメトロ)だろう。ソビエト時代の1930年代に開業したそれは、優美な大理石の彫刻やモザイク、柱、天井の豪華なシャンデリアなどで知られている。
米国では5月8日、ロサンゼルスで約6.3kmの延伸工事が行われていた地下鉄D線の新駅が開業。構内のパブリックアートが利用者たちにお披露目された。ダウンタウンからビバリーヒルズまでを結ぶこの路線では今後、ウエストウッドまでの延伸が計画されている。
空間に「人間味を与える」パブリックアート
ウィルシャー大通りに沿ったラ・ブレア、フェアファックス、ラ・シエネガの3駅の構内とプラットフォーム周辺には、大型の壁画をはじめとする作品が設置された。ロサンゼルス郡都市交通局(LAメトロ)のパブリックアート・デザイン担当ディレクター、クレア・ハガーティはインタビューで、それらは「場所の感覚」をもたらすものだと述べている。
「公共のスペースに人間味と安心感を与えてくれます。『LAメトロ・アート』は利用者にとって、行くべき方向をわかりやすくしてくれるものでもあります。自分が今いる場所を、確認するためのものになるのです」
そのほかハガーティによると、LAメトロのプロジェクトは40年ほど前から継続されているものであり、「米国内で最も古く、作品のコレクションも最大規模」だという。
フェアファックス駅:テーマは「人間味」
D線に新設された3駅での作品の制作には、1400人以上のアーティストたちが応募し、9人が選ばれた。ミュージアム・ロウ地区にあるフェアファックス駅に『Hands and Things(手とモノ)』と題したインスタレーションを完成させたのは、カール・ヘンデル。写真と超写実的な鉛筆画を組み合わせた彼の作品は、駅のエスカレーター周辺の壁や、コンコース内で見ることができる。
コーヒーサーバーやフィルムカメラ、ケン人形(バービー人形のボーイフレンド)、車のハンドルなど、ヘンデルが描いた「手」が持つさまざまな「モノ」は、近隣の文化施設などから集められたものだ。また、「手」は実際にこの駅の周辺で働く、あるいは暮らす人たちの手をモデルに描かれており、見る人たちの多くに、理屈では語れない感情をもたらしているという。



