5月13日から24日にかけて開催された第79回カンヌ国際映画祭(Festival de Cannes)。現地を訪れたエンタメ社会学者・中山淳雄がレポートを寄稿してくれた。
世界7000作の新作映画、頂点を目指して選出された日本の10作品
第79回カンヌ国際映画祭。今年のカンヌを象徴したのは、日本の存在感だった。映画見本市「Marché du Film」の「COH(Country of Honor:名誉ある国)」として、日本が初めてイベントのメインテーマ国に選出。会場中にCOH:Japanの旗がたち、初日の公式パーティや基調講演などを日本が主催した。さらに、『箱の中の羊』『ナギダイアリー』『急に具合が悪くなる』の3作品もがパルムドールのコンペティション作品に選ばれた。
カンヌの構造は複雑極まりないが、まるでアートやワインの世界のように奥深い。その歴史と階層を知ることは「この文化世界の頂点を極めるための登攀ルート」を知ることでもある。世界に数千もある映画祭のなかで、「国際A級映画祭」として認められるのはわずか15(アカデミー賞=オスカーはアメリカ映画が中心で、映画祭というより授賞式なので入っていない)、格式ある世界映画祭「カンヌ」「ヴェネツイア」「ベルリン」のトップ3のうち、間違いなく頂点にあるのがカンヌだ。映画を志す人間にとって、誰もが羨望し、ここに招かれることを希求している。
7707本——これが2025年に全世界で製作された上映映画の総本数だ。そこに入らない短編・インディーズまで含めレバ、カンヌには年6〜7000作、長編だけでも2500ほどの応募作が集まる。この中でノミネート作(カンヌで上映できる権利)となれるのは2〜3%の百数十作品といった具合だ。今年は最高賞「パルムドール」を争うコンペティション部門に、日本から3作品が選ばれた。
これ以外にも、複数ある部門のうち、2番目に古い「ある視点部門」では『すべて真夜中の恋人たち』『タイタニック・オーシャン』の2作がノミネート、「カンヌ・クラシックス部門」では『姿三四郎』『新幹線大爆破』、独立並行部門の監督週間では『我々は宇宙人』『エリ』、アニメーション部門では『HIDARI』『WASTED CHEF』なども選ばれ、数えると10作品、日本からは関係者だけで100人規模がカンヌを訪れることになった。
知らない作品ばかり? 当然だ。カンヌは「クラシックス部門」以外、「一般公開されていない未上映作品(新作)だけ」の祭典であり、ここで選出されたことで世界のメディアから注目され、作品としての箔がつくからだ(配信専門で劇場公開をされない映画は対象外ということになる)。
「それまでは毎年あっても2、3本だったものが、パルムドール候補の3作、およびクラシック作品もあわせて10作品近く選ばれたのは稀。実は2025年も同規模だった。今日本映画ブームがきている」というのは、カントリー・オブ・オナーのプログラム運営を担当する長谷川敏行氏の言葉だ。



