モビリティ

2026.05.29 17:00

「補助金は不要」と説くマスク、電動トラック「テスラ・セミ」はカリフォルニア州の補助金漬け

イーロン・マスク(Photo by Johannes Neudecker/picture alliance via Getty Images)

イーロン・マスク(Photo by Johannes Neudecker/picture alliance via Getty Images)

過激な発言で知られるビリオネア起業家のイーロン・マスクは、かつて本拠を構えたカリフォルニア州をたびたびこき下ろしてきた。しかし、電気自動車(EV)メーカーであるテスラが新たに投入する電動大型トラック「テスラ・セミ」を販売する上で、同州の手厚いインセンティブと巨大な顧客基盤は欠かせないものとなっている。

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テスラに資金源と中核顧客を与えた、20年前のカリフォルニア

20年前、テスラがシリコンバレーのごく小さなスタートアップだった頃、カリフォルニア州の大気汚染規制は同社に新たな資金源をもたらした。EVメーカーである同社は、ガソリン車を販売する自動車メーカーに温室効果ガス排出枠(クレジット)を販売することで、ほぼ元手のかからない収益を手にしていた。同州の裕福で環境意識が高い消費者は、テスラのEV事業を支える中核顧客となった。こうした追い風が現代のEV産業の発展に弾みをつけ、CEOのイーロン・マスクを世界一の富豪へと押し上げる一因にもなった。

補助金をなくせば有利になると訴えてきたマスク

だが、マスクはその恩恵に感謝してきたわけではない。

マスクは2021年末、テスラの本社をカリフォルニア州外に移した。その前年には、自らも同州を離れていた。きっかけの1つは、州がコロナ禍の初期にテスラのフリーモント工場に一時的な生産停止を求めたことだった。マスクは決算説明会で、この措置が「ファシスト的」な規制だと激しく非難し、その後もカリフォルニア州の規制当局について「ほぼすべてを違法にしようとしている」と批判していた。

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マスクは、テスラが補助金に依存しているという見方をばかげていると主張してきた。2024年のXの投稿では、「補助金をなくせばいい。そうすればテスラにとって有利になるだけだ」と書き込み、「すべての産業から補助金をなくすべきだ」とも訴えた。

電動大型トラックの最初の主要市場となったカリフォルニア

今、全米で最も手厚いゼロエミッション・トラック向け優遇制度と巨大なトラック輸送市場を抱えるカリフォルニア州は、テスラの最新モデルにとって最初の主要市場になっている。同州を離れたマスクは、ここでも再びカリフォルニアに助けられている。

マスクが9年前に初披露した電動大型トラック「テスラ・セミ」は、2026年4月にようやくネバダ州で生産が始まった。カリフォルニア州はこれまで、ゼロエミッション大型車の購入者を対象とする補助制度「HVIP」を通じて、1200件を超える補助枠をテスラ・セミ向けに承認した。補助額の総額は1億7200万ドル(約273億4800万円。1ドル=159円換算)にのぼり、件数ではテスラに最も近い競合企業の2倍に当たる。テスラ・セミの車両価格は、この補助により12万ドル(約1908万円)安くなる。

フォーブスが入手したテスラの価格表の写しによると、テスラ・セミの価格は航続距離300マイルのモデルが25万ドル(約4000万円)、500マイルのモデルが29万ドル(約4600万円)だ。カリフォルニア州は5月13日、ゼロエミッション・トラック向けに新たに10億ドル(約1590億円)の追加資金を発表しており、同州はテスラにとって一段と重要な市場になりそうだ。

発言と食い違う、テスラの根深い補助金依存

米国最大のEVブランドが投入した最新モデルに強い関心が寄せられるのは自然なことだ。米国とイランの紛争が2月28日に始まって以降、ディーゼル燃料価格は50%近く急騰しており、電動トラックへの関心を高める要因になっている。だが、テスラ・セミの普及が手厚い優遇制度に支えられている現実は、補助金やカリフォルニア州に関するマスクのこれまでの発言とは大きく食い違っている。

「テスラが補助金で生き延びていると思っている人は、驚くほど多い。それは競合他社には当てはまるが、テスラには当てはまらない」とマスクは2024年に述べていた。

しかし、実態はそれほど単純ではない。カリフォルニア州の電動トラック向けリベートはメーカーではなく購入者に支払われるが、高額な車両を補助なしの場合より買いやすくすることで、テスラの販売を下支えしている。実際、テスラは政府の補助に最も多くぶら下がってきた企業の1つだ。同社は過去14年間に、カリフォルニア州、米国、EUが監督する制度の下で排出枠クレジットを販売し、間接的な政府補助を通じて135億ドル超(約2.1兆円)を得てきた。マスクはカリフォルニア州と同州の「高圧的な規制当局」を批判しているが、米国内でテスラEVの最大の買い手となっているのは、ほかならぬカリフォルニア州だ。テスラ・セミについても、同じ構図になりそうだ。

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翻訳=上田裕資

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