ホルムズ海峡の封鎖は、液化天然ガス(LNG)の価格を急騰させただけでなく、東南アジアのエネルギー安全保障に対する幻想を打ち砕いた。今回の米・イスラエルとイランとの紛争が勃発する前、湾岸地域で産出されるLNGの取引価格は1MMBtu(百万英熱量単位)あたり10~12ドルだったが、現在は20.80ドルまで値上がりしている。コストが実質的に倍増したことで、脱炭素社会への転換期を支えるはずの「ブリッジフューエル(移行燃料)」は一転、財政の足かせへと変貌した。
ホルムズ海峡は幅わずか33km。東南アジアには、このエネルギー・ボトルネックを通過する9000km超にも及ぶサプライチェーンに経済の未来を賭ける余裕はない。イランをめぐる混乱により、かつて持続可能性の目標であった脱炭素化は、差し迫った技術的優先課題へと変わった。
LNGを確保できなかったり、高騰した代金を支払えなかったりすれば、電気が消えるのだ。電力を安定供給するため、各国政府は再生可能エネルギーを「パニック買い」している。気候変動への意識が突然高まったからではなく、太陽光パネルは発電に海軍の護衛を必要としないからだ。
経済的な影響はすでに数字に表れている。アジア開発銀行(ADB)は最近、アジア・太平洋地域の成長率見通しを5.1%から4.7%に引き下げた。エネルギー価格の影響があらゆる分野に波及する中、再生可能エネルギーへの移行は「現実的かつ実利的な地政学的ヘッジ」へと成熟しつつある。すなわち、ミサイルや封鎖によって化石燃料の価格が左右される世界に対する恒久的な保険である。
今月フィリピン・セブ島で開催された第48回東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議で、クリーンエネルギー分野の起業家を支援する国際NPO「ニュー・エナジー・ネクサス」のフィリピン担当カントリーディレクターであるブレンダ・バレリオは次のように語った。「フィリピンの化石燃料モデルは中央集権的で、極めて地政学的だ。輸入に依存し、サプライチェーンは長く、世界規模のショックによって大きな影響を受けやすい。だが、再生可能エネルギーはこの力学を変える」



