アジア

2026.05.22 07:00

イラン危機、東南アジアは再エネに舵を切った 地政学的圧力に「ノー」と言えるインフラ構築へ

第48回東南アジア諸国連合(ASEAN)首脳会議の開会式で記念写真の撮影に臨む各国首脳ら。2026年5月8日、フィリピン・セブ島にて(Daniel Ceng/Anadolu via Getty Images)

東南アジアがなぜ方向転換しているのかを理解するには、約4800km離れた北の地へ目を向ければよい。この変化は、中央アジアで今起こっている事態を反映している。かつてロシアが管理するパイプラインに縛られていた国々が、地政学的な圧力に「ノー」と言えるインフラを構築しつつあるのだ。ロシアの領土を戦略的に迂回する「中央回廊(ミドルコリドー)」などの新しい輸送ルートを活用して、中央アジア諸国は市場価格を受け入れるしかない「価格受容者」から脱却し、「政策の決定者」へと変身を遂げようとしている。

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この教訓は、ASEANにもそのまま当てはまる。どちらの地域でも目標は同じだ。脆弱な輸入に代わり、自国が管理するインフラを確立することである。国家の電力網というのは、いわば正確な回転数で稼働しなければならない巨大な機械のようなものだ。従来、国内の発電所が故障したり太陽光発電の出力が低下したりした場合、各国は電力供給を維持するために「外国製のショックアブソーバー」に頼ってきた。中央アジアではそれがロシアの送電網だった。東南アジアでは、長さ9000km超もの「命綱」を介して輸入するLNGだった。

海峡封鎖は「触媒」

しかし、この資本には隠れたコストが伴う。それは日本の電力会社が今まさに手放そうとしているLNGを数十年間にわたり購入し続けるという約束だ。もし日本がすべてのLNGを必要とした場合、パートナー国は救われない。世界のスポット市場に放り出されたところで、競争できるだけの資金力を持たないからだ。マレーシアではすでに燃料補助金が月額8億1900万ドル(約1300億円)にまで膨れ上がった。東南アジアにおいて日本の戦略は、保険でも戦略的盾でもなく、重荷となっている。

この危機の最終局面は「ASEAN統合」になるだろう。これは技術的な目標ではなく、生存戦略である。歴史的に東南アジア諸国は孤立して運営され、出荷量の限られたLNGをめぐって競合してきた。域内で電力網が統合されれば、この構図は一変する。資源の平準化が可能になるのだ。フィリピンの空が曇りの日に不足した電力は、ベトナムの風の強い午後や、ラオスの余剰水力発電によって相殺される。

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電力網を連結することで、加盟国は国内の余剰電力をリアルタイムで共有できる。これにより、化石燃料に依存した大規模な予備電源を各国が独自に維持しなければならなかった時代は「終焉」を迎える。

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翻訳・編集=荻原藤緒

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