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2026.05.24 17:00

トランプ次男の小児がん慈善団体は、一族の事業にどう資金を流し続けてきたか

エリック・トランプ(Photo by Carmen Mandato/Getty Images)

政治との距離の近さが問題視され刷新された、2017年の理事会

エリック・トランプ財団がセント・ジュードに多額の寄付をしていたことも事実だ。寄付額は2007年には22万ドル(約3498万円)だったが、トランプが初めて大統領選に勝利した2016年には290万ドル(約4億6110万円)に増えていた。ただ、政治との距離の近さも問題視されるようになった。同年末、デイリー・ビーストとAP通信は、トランプが所有するクラブと財団の間の取引の一部を報じるとともに、がん支援とは関係のない慈善団体にも資金が流れていたと指摘した。ニューヨーク・タイムズも、エリック・トランプ財団を支援するオークションで、ある投資マネジャーがイバンカ・トランプとコーヒーを飲む権利に6万ドル(約954万円)近くを投じていたと報じた。

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エリックの慈善団体の問題は、単なるイメージ悪化では済まなかった。州法は、非営利団体が関連当事者との取引を行う場合、理事会の過半数で承認し、その判断理由を記録に残すよう義務づけていた。連邦法も、慈善団体に対し、そうした取引の詳細を年次の税務申告書に記載するよう求めていた。ところがエリック・トランプ財団は、こうした規則を守っていなかった。そのため同財団は、問題の整理に乗り出し、その一環としてトランプ家との距離を置こうとした。

この対応は、2017年3月22日に開かれ刷新された理事会で1つの区切りを迎えた。エリックを含むトランプ・オーガナイゼーションの従業員は全員、財団の理事会から外れた。エリックは、父親が大統領に在任中は自身の関与が問題視されるのを避けたいとして、「私は個人的に資金集めをしていないし、父が退任するまではそうしない」と語った。

団体名は「Curetivity(キュアティビティ)」に変更され、寄付金はすべてセント・ジュードに送られることになった。この団体は、エリックの友人が小児がんの子どもを助けるために活動していた当初の姿に戻ろうとしているように見えた。

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だが、大きな問題が1つあった。エリックは理事会を退いた後も、この非営利団体を「この国における慈善の模範であり、効率性の模範だ」と喧伝し続けた。その自賛は、トランプ家に特徴的な誇張された最上級の言い回しによって、一般的な説明の域を大きく超えていた。2017年3月の理事会から約1カ月後、エリックはフォーブスに対し、「我々には、世界最高の施設を100%無料で使えるという利点がある。だからこそ、慈善団体として史上最も低い経費率の1つを維持できている」と語っていた。

2017年のフォーブス報道の2日後に始まった州当局の調査

フォーブスが最初の記事を掲載した2017年6月6日、エリックは怒りをあらわにしてFOXニュースに出演した。彼は、この追及が大がかりな政治的陰謀の一部だと信じ込んでいた。司会者のショーン・ハニティに対し、エリックは「分かりますか。こんな憎しみは見たことがない。私に言わせれば、彼らは人間ですらない」と語った。「私は今日、攻撃された。私はセント・ジュードのために1630万ドル(約25億9170万円)を集めてきた」と述べ、自らを被害者として位置づけたうえで、「社会の道徳心の欠如」を嘆いた。

その2日後、ニューヨーク州司法長官室はエリックの財団に書簡を送り、銀行取引明細や理事会の議事録、寄付者への確認書などの提出を求めた。

ペイジ・スカーディグリは、エリックの大学時代の友人で、財団のエグゼクティブディレクターを務めていた。彼女はそのとき、事務所でエリックと一緒にいた。エリックは書類を手渡しながら、「政治の世界へようこそ、ペイジ」と言った。3週間後、トランプ家の事業と深いつながりを持つ弁護士シェリ・ディロンが正式に回答し、大量の文書を提出した。同時に州当局に対し、それらの文書を情報公開請求の対象から除外するよう求めた。

フォーブスが最終的に入手した書類を見れば、この非営利団体が記録を隠したがった理由は容易に分かる。イベントプログラムでは、「集めた資金のほぼ100%をセント・ジュードに届ける」とうたわれていた。ところが、その書類には、トランプ関連施設への小切手、運転手付き車両の領収書、他の慈善団体への数々の支払い記録が含まれていた。

この調査は団体に打撃を与えた。2017年の寄付額は3分の1以下に落ち込み、100万ドル(約1億5900万円)を下回った。逆にマーケティングや会計、法務などの費用は、ほぼゼロだった状態から年間約5万ドル(約795万円)へと急増した。

調査を受けて団体が進めた、過去3年分の財務諸表の修正

司法長官室は12月までに文書の精査を進め、慈善団体に追加の書簡を送った。その中で当局は、一般に認められた会計原則に準拠していない複数年分の財務諸表、自己取引をめぐる規則の軽視、誤解を招くマーケティング資料の乱発など、複数の問題を指摘した。司法長官室は、エリックの非営利団体がニューヨーク州で寄付金を募るための登録を取り消す可能性も示唆した。エリックの団体はこれを受け、後始末に乗り出した。まず過去3年分の財務諸表を修正した。

2018年1月の会議記録によると、理事はゴルフ場との取引をさかのぼって承認した。理事会はホテルへの支払いを問題視せず、トランプ家のワイナリーからの購入についても、請求書とともに返金小切手が送られていたとして「些細なもの」と判断した。

ある理事は、「将来のイベントでは別のゴルフ場を検討すべきだ」と提案したものの、スカーディグリは、それでは費用が高くなると答え、その理事もすぐに引き下がった。そして、対応に追われる中で、理事会は1件の取引を見落としていた。マール・ア・ラーゴへの1万1000ドル(約175万円)の支払いだ。理事会はその後の会議で、この取引も追認した。議事録を見る限り、エリックが対外的にうたってきた「トランプ関連施設を無料で使える」という説明に沿って、今後は施設を無償で利用すべきかどうかを検討した形跡はなかった。

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翻訳=上田裕資

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