14年前、セルゲイ・ブリンはパラシュート降下でGoogle I/Oの会場に乗り込み、Google Glassを発表した。テクノロジーに少しでも関心のある人なら誰でも知っているとおり、その後の数年間はブリンが「あのときパラシュートが開かなければよかった」と思った日もあったかもしれない。Google Glassは商業的に完全な失敗作と見なされ、消費者向け版はわずか数年で販売終了となったからだ(企業向け版はその後も数年間生き残った)。
問題はいくつもあったが、何よりGoogle Glassは魅力的でもクールでもなく、装着している人は「グラスホール」(glassholeはasshole:間抜け、と引っ掛けた蔑称)と揶揄された。
米国時間5月19日のGoogle I/Oでの発表によって、「グラスホール」時代は正式に幕を閉じる。
グーグルが「インテリジェント・アイウェア」と名づけたこのスマートグラスの発表は、まずその見た目から始まった。グーグルは人気アイウェアブランドのワービーパーカー、ジェントルモンスターとの提携を発表しており、グラスは普段使いのメガネとほぼ見分けがつかない仕上がりとなっている。
これは、メタとの市場シェア争いにおいてグーグルに有利に働くだろう。メタはレイバンと提携しており、マーク・ザッカーバーグが先日、ファッション業界の著名人が集うメットガラに登場した姿は、アイウェア領域における他のファッションブランドとの提携を示唆している。
見た目は決まった。では機能はどうか。ディスプレイ付きのAIグラスを期待するユーザーは、グーグルが何を作り上げるのかを見届けるために2027年まで待たねばならないが、今年後半に発売されるオーディオグラスにも十分に期待できる要素がある。実際、現在市場に出ている他のメガネ(そのリストは日々増え続けているように見える)よりも用途は多い。なぜなら、グーグルには非常に大きなパートナーのエコシステムがあるからだ。
昨秋のメタによる魅力的だがエラーだらけのデモとは異なり、グーグルが披露した利用例はほぼ完璧に機能した。さらに、多くの人が日常生活で使いたいと思える使用例も提示された。
たとえば道案内である。過去15年間に街を歩いたことのある人なら誰でも知っているように、多くの人々がスマートフォンで道順を確認しては顔を上げる動作を繰り返している。つまり、周囲に注意を払えず、歩く速度も普段より遅くなっているということだ。地下鉄で日々この状況に直面している筆者にとって、人々が前を向いて周囲に注意を払いながら道案内を音声で聞ければよい、というアイデアは、今すぐ財布を開いて購入したくなるほど魅力的だ。
さらに重要なのは、グーグルが描くAIグラスのビジョンが、ユーザーがアプリを開く代わりに会話形式でサービスとやり取りする未来を示している点だ。これはスマートフォンのアプリ経済そのものの一部を脅かしかねない変化だ。
AIグラスに話しかけるだけでいつものコーヒーを注文してもらう、というのは一見たいしたことのないように思える。しかし、アプリがおすすめ機能や広告で収益を上げているなかで、ユーザーがそのアプリの恩恵を受けるためにアプリを開く必要がなくなるとしたら、それは抜本的な変化となりうる。



