ロケ地の「便利屋」から脱却、業界先駆者の神戸フィルムオフィスが目指すもの

コンテナ埠頭での撮影:「帰ってきたあぶない刑事」(2024年)

コンテナ埠頭での撮影:「帰ってきたあぶない刑事」(2024年)

映画やドラマのロケーション撮影で、現地での場所選びや道路などの使用許可、エキストラの手配他で撮影チームの支援をする「フィルムコミッション」と呼ばれる公的組織がある。全国各地に約400の団体があるのだが、その先駆者が今岐路に立たされている

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1990年代に韓国映画が台頭しはじめた頃、実は日本映画は映像の現実感やスケール感で競争力を欠いていた。なぜなら、実際の街中や建物を使った「ロケーション撮影」に弱点があったからだ。セットを組んだスタジオ撮影だけでは、奥行きのない安っぽい映像になる。

そんななか、2000年、神戸や大阪、北九州でフィルムコミッションが設立される。創成期の「神戸フィルムオフィス」に加わり、現在チームを率いる土屋千佳から話を聞いた。

神戸フィルムオフィスを率いる土屋千佳
神戸フィルムオフィスを率いる土屋千佳(撮影:多名部 重則)

映画「GO」で異例のロケ撮影を敢行

神戸で生まれ育った土屋は、学生時代、ロードショー公開の終わった作品を上映する地元の名画座へ足しげく通っていた、筋金入りの映画好きだ。

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地元の大学を卒業すると、東京で映画情報を衛星放送テレビで流す番組などに携わり、この業界で働くようになる。そんなとき、故郷の神戸でフィルムコミッションがつくられることをニュースで知る。ロケ撮影の大事さを知っていた彼女は、胸騒ぎがしたという。

2003年に、神戸市の外郭団体である「神戸国際観光コンベンション協会(現在の神戸観光局)」内に置かれた「神戸フィルムオフィス」が、臨時職員を募集しているのを知ると、迷わず手を挙げたのだ。そして、やがて正規の職員として働くようになる。

自らの経験と神戸フィルムオフィスの歴史を重ねて話しはじめた土屋は「神戸は映画などの撮影業界でロケ地に選ばれる確固たる地位が確立されました。あらゆるシーンが撮れる街だと認知されています」と言う。

2001年に公開された「GO」(行定勲監督)という映画では、神戸市営地下鉄の線路上を俳優が走り、カメラも線路の上に置いて撮影。もちろん、営業終了後の時間帯だが、現役の鉄道施設をそのまま使うのは、当時はかなりの異例のことだった。

神戸市営地下鉄の駅構内での撮影:「GO」(2001年)
神戸市営地下鉄の駅構内での撮影:「GO」(2001年)

このときの神戸フィルムオフィスの活動が全国の映画制作者たちにその名を知られる決定打となった。日本映画の常識を覆したSFアクション映画「リターナー」(山崎貴監督、2002年)では、神戸の岸壁に停泊した船とヘリコプターとの銃撃戦や公道での車の爆破シーンも撮影された。

公道上での爆破シーン:「リターナー」(2003年)
公道上での爆破シーン:「リターナー」(2003年)

神戸フィルムオフィスは神戸市の事業だと説明できるので、映画製作スタッフだけでは難しい警察など行政機関、民間企業などとの調整がスムーズにできるわけだ。

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文=多名部 重則

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