経済効果という幻想
公的補助金の推進派は、見出し映えする経済効果予測に依存しがちだ。FIFAとパートナーは、北米全体での便益を数百億ドル(数兆円)規模と見積もっている。
しかし経済学者は、こうした数字に懐疑的だ。これらの予測は通常、楽観的な前提に依拠する。大量の域外来訪者が開催都市へ押し寄せること、その支出が完全に新たな経済活動を意味すること、そしてイベントが他の観光や地元の消費を押しのけないこと。売上税の増加といった基本的な税収指標でさえ、その赤字幅を埋めるには至らない。
ヒューストン・クロニクル紙およびテキサス・トリビューン紙との共同調査によると、ヒューストンとダラスがワールドカップを開催するにあたり、テキサス州の納税者が再び負担を負わされる可能性が高いことが明らかになった。両市は、米国で試合開催に同意した11都市の一部であり、数億ドル(数百億円)規模のコストを伴う開催を受け入れている。これは、FIFAが110億ドル(約1兆7400億円)の利益を生むと述べているワールドカップを、都市側が補助する構図だ。
開催都市の契約の多くは依然として極秘で、財務の詳細は黒塗りにされたり、全面的に非公開とされたりしている。イベント実行を担う非営利の組織委員会は情報公開法の対象外であり、透明性はさらに制限される。
この可視性の欠如は、ガバナンス上の問題にとどまらず、実際の財政面の含意をもつ。組織委員会が資金調達で不足すれば、最終的に誰が負担するのかが不明確な場合が多い。公職者は、民間資金が費用をカバーすると自信を示しがちだが、完全な財務データにアクセスできなければ、その保証は検証が難しい。
一方で納税者の支援は、テキサス州のMajor Events Reimbursement Program(大型イベント払い戻しプログラム)のような仕組みを通じて流れ続けている。同プログラムは過去10年で数億ドル(数百億円)を配分してきたが、経済効果を決定的に特定できないとの指摘が繰り返されてきたにもかかわらず、である。
こうした事情があるため、ニュージャージー州は、7月19日に決勝も開催するメットライフ・スタジアムへ向かう往復の鉄道運賃を、ニューヨーク市から通常の12.90ドル(約2040円)から150ドル(約2万3800円)へ変更せざるを得なくなった。そうしなければ、臨時列車の増発と警備強化の費用を吸収する必要が生じ、数百万ドル、さらにはそれ以上の損失を被ることになる。


