イーロン・マスク率いる米宇宙企業スペースXが打ち上げたロケットの残骸(デブリ)が、今年8月5日に月面に衝突し、新たなクレーターを形成する可能性があるという。
地球近傍天体や宇宙ゴミを追跡するソフトウェアプログラムを提供するウェブサイト「プロジェクト・プルート」のビル・グレイの報告によると、このデブリは2025年1月15日に米フロリダ州ケネディ宇宙センターの39A発射場から宇宙へ打ち上げられた「ファルコン9」ロケットの廃棄された上段部(全長13.8m)。米東部夏時間8月5日未明(日本時間同日午後)に、地球から見て月面の左端に激突するとみられている。
問題のデブリは今どこにあるのか
このデブリには国際衛星識別符号「2025-010D」が割り振られている。現在は、地球を26日周期で周回する楕円軌道上にあり、地球から最も遠い地点(遠地点)の距離は51万kmにもなる。これは、平均38万4000kmの月と地球の距離よりも遠い。
軌道上の宇宙ゴミは増加の一途をたどっている。欧州宇宙機関(ESA)によれば現在、約3万5 000個の物体が複数の宇宙監視ネットワークによって追跡されている。
「2025-010D」は月面のどこに衝突する?
グレイの計算では、「2025-010D」は月の西側(地球から見て左側)の縁近くにある「アインシュタイン・クレーター」に衝突する。アインシュタイン・クレーターは直径181~198kmで、地球からは見えにくい位置にある。
衝突時刻は米東部夏時間8月5日午前2時44分(日本時間同日午後3時44分)頃とみられ、衝突時の速度は秒速2.43km/時速8700kmと予測されている。
アマチュア天文学者のトニー・ダンは、この衝突のシミュレーション動画を公開した。
A rocket booster will slam into the Moon on August 5. 2025-010D is the upper stage of a Falcon 9 rocket that brought the Blue Ghost Mission 1 to the Moon. pic.twitter.com/DS7EqYuAZb
— Tony Dunn (@tony873004) May 2, 2026
「ブルーゴースト」と「HAKUTO-R」の打ち上げロケット
現在、月面への衝突コースにあるとされる「2025-010D」は、2つの月探査ミッションの打ち上げに使われたロケットの残骸だ。米宇宙企業ファイアフライ・エアロスペースの「ブルーゴースト・ミッション1」と、日本の宇宙ベンチャー企業ispace(アイスペース)の「HAKUTO-R・ミッション2」である。
このうち、正式名称を「ゴースト・ライダーズ・イン・ザ・スカイ(Ghost Riders in the Sky)」というファイアフライのミッションは、2025年3月2日に月面の「危難の海(Mare Crisium)」への宇宙船ブルーゴースト着陸に成功した。初挑戦での軟着陸の完全成功は、民間企業として初の快挙だった。
ブルーゴーストは、月の夜が訪れて太陽電池からの電力供給が途絶えるまで14.5日間にわたり稼働。月面からの皆既日食や日の出など、数々のすばらしい画像を撮影した。
一方、ispaceの「HAKUTO-R・ミッション2」は、無人着陸船「RESILIENCE(レジリエンス)」による月面着陸を目指したが成功には至らなかった。同社は2025年6月★6日、レジリエンスは月面にハードランディングした可能性が高いとしてミッションの終了を発表した。
宇宙ゴミは月開発の脅威となるか
現時点では宇宙ゴミが月面に衝突しても何ら危険はないが、将来はそうとは限らない。
米航空宇宙局(NASA)の有人月探査プログラム「アルテミス計画」は先ごろ有人月周回ミッション「アルテミスII」を完了したばかりだが、段階的に「アポロ計画」以来の月面有人着陸を実現し、最終的には恒久的な月面基地の建設を目指している。
皮肉なことに、「アルテミスIV」ミッションで宇宙飛行士2人を月面に着陸させる計画の成否は完全に、スペースXとジェフ・ベゾス率いる米宇宙企業ブルーオリジンが手掛ける月面着陸機の開発の進展にかかっている。



