「揚州商人」という名のラーメンチェーンをご存知だろうか。関東一円に38店舗を展開するスーラータンメン(酸辣湯麺)とタンタン麺が人気のローカルチェーンだが、筆者がかねてより気になっていたのはその店名だった。
もしや、中国出身の人が始めたのではないだろうか。上海でも広東でもない、揚州は日本人にはいまひとつピンとこない中国江蘇省の一地方名で、あえてそれを店名に掲げているのが、不思議でならなかった。
先月、その揚州商人を運営する会社「ホイッスル三好」で、3月から期間限定で提供している新メニュー「麻辣麺」のメディア試食会があることを知り、これはいい機会と出席することにした。
マーラータンは中華業界に定着
揚州商人の「麻辣麺」のスープは、いまどき流行の中国東北風あるいは韓国風マーラータンに似た軽いしびれと甘みが利いている。
総括本部マーケティング企画部の鈴木邦彦商品開発次長に「最近のマーラータンのブームはすごいですね」と聞くと、「もうブームではなく、日本の中華業界に広く定着している」とのことだ。
確かに、最近、多くの外食チェーンがメニューにマーラータンを採り入れている。中華系のみならず、和風のつけ麺や持ち帰り弁当のチェーンなどでも期間限定で提供。大手飲食メーカーの冷凍食品やカップ麺、スナック菓子にまで及んでいるのには驚いてしまう。
さて、試食会の会場である揚州商人の新橋店を訪ね、筆者はこの店のネーミングの秘密を知ることになった。
なんでも現在の社長の曾祖父が、1920年に中国江蘇省の揚州から渡ってきた人物で、戦後に足立区の千住大橋に「正華」というラーメン店を開いたという。そして現在の揚州商人は1990年に現社長の父親、つまり揚州から渡ってきた人物の孫にあたる先代が本格的にチェーン化したのだそうだ。
曾祖父が来日した20世紀初頭の同じ時期、たとえば周恩来元首相は1917年に日本に留学している。当時はいまほどの数ではないものの、多くの中国人がアジアで最初に近代国家を建設した日本で学ぼうと来日していた。では、いったい曽祖父はどんな経緯で来日することになったのだろうか。
それを知るため、同社の創業にまつわる歴史について書面で質問したところ、三好一太朗現社長(39歳)の手による創業家一族のルーツと4代にわたる事業に関する興味深い回答メールが届いた。さらに、その翌週、筆者は同社を訪ね、三好社長自身に話を聞くことになった。
以下、そのインタビューの一部を紹介したい。



