──生成AI時代のベストなキャリア戦略とは?
グラットン:まず、人生100年時代には、フルタイムで教育を受け、フルタイムで働き、完全に引退するという、従来の3ステージで人生を考えるのではなく、「マルチステージ」での人生設計が必要だ。仕事を中断して、まとまった休みを取ったり、起業したりと、より多くの変化や選択が求められる。長寿時代には、それが非常に重要な意味をもつ。
AI時代のキャリアで最も価値を置くべきものは「人間らしさ」だ。人間は驚くべき存在だ。思いやりや笑い、冒険、愛情、友情──。私たちは、こうした人間の資質を大切にする必要がある。AIチャットボットとやり取りすると、ボットが友達になったかのように感じるが、ボットはボットだ。生身の人間とは違う。
私たちは「人間らしさ」、つまり、自分の特異性や独自のやり方を築くべきだ。AIには独自性がなく、どれも平均的に見えるからこそ、特異性と独自性という人間の役割が重要になってくる。
──日本では「人生100年時代」という言葉が人気です。しかし、100歳まで生きられる人は少なく、充実したキャリアを築ける期間は限られています。企業は若い人を欲しがり、ゼネラリストの中高年が好条件で転職するのは難しいのが現実です。
グラットン:ポイントはふたつ。まず、ビジネスパーソンは、「積極的に学び、成長している」ことをアピールすべきだ。長寿時代には「生産性の糸」が極めて重要であり、生涯を通じて生産性向上に努める必要がある。マルチステージの人生では、学び続けなければならない。
ひるがえって、企業は、60代、70代、いや80代になっても、知恵や知性を仕事に生かせる人々がいることを理解し、年齢を重ねることの意味を再考すべきだ。若者から年配者まで、幅広い世代の人々がともに働き、学び合うことで、驚くほど生産性の高いチームが生まれる。
──教授は『LIFE SHIFT』などで、長寿時代のキャリア形成や働き方について論じてきました。日本のビジネスパーソンにアドバイスを。
グラットン:AI時代をサバイブし、息の長いキャリアを築くには、一生、学び続け、転職を重ね、常に新しい役割や仕事へと前進し続けなければならない。絶えず生産性の向上に励む必要がある。
だが、生産性だけでは足りない。友情や家族関係、心の平穏など、自らをいたわり、自分自身を育てていくことも重要だ。生産性ばかりに気を取られていれば、燃え尽きてしまう。
一方、自分のケアばかりで、生産性を高めなければ、キャリアを維持できない。AI時代に息の長いキャリアを築くには、生涯を通じ、生産性の向上と自分自身の育成やセルフケアに努める必要がある。では、どうすれば、それが可能か? 新著で、それを論じている。
リンダ・グラットン◎ロンドン・ビジネススクール教授。1955年生まれ。人材論、組織論の世界的権威。組織イノベーションを促進する企業Hot Spots Movement創始者。「働き方の未来コンソーシアム」を率いる。著書に、日本でもベストセラーとなった『ワーク・シフト』『LIFE SHIFT』などがある。


