──米フォーブスの1月12日付オンライン記事「2026年の職場改革:生産性、AI、ハイブリッドワークの最優先課題」で、今年の最重要課題に「生産性」を挙げていますね。
グラットン:経済や政治、テクノロジーの点で不確実性が高い時代には、生産性が極めて重要になる。生涯を通じ、できる限り生産性を高められるような働き方をしなければならない。
新著では、70代まで生産性を維持するにはどうすべきかについて論じた。日本のように、高齢化が進む国では、可能な限り生産性を保てるようにすることが非常に重要だ。
米フォーブスの記事で、2026年の生産性は「より長い労働時間や、より厳格な監督によってではなく、仕事のリデザインによって推進される」と書いた。私たちは、次のように自問自答しなければならない。人間として成長し、可能な限り生産性を高めるためには、どうすべきか?
──生産性向上のためのAI活用戦略と、従業員の学習や発達、アイデンティティ形成のためのAI活用戦略には違いがありますか。
グラットン:いや、まったくない。AIの優れた点のひとつは、その広範な活用だ。AI関連のツールの多くが、幹部から一般従業員レベルへと普及している。AIの興味深い点は、個人がAIを使って、どのような実験に挑むかだ。
シンガポールにある企業の幹部らと話をしたときのことだ。彼らによると、従業員に実験をしてほしいという。従業員は、実験を通して学ぶ必要がある、と。そして、幹部らも、「従業員の学習方法を学ばなければならない」と、言っていた。
その背景には、彼らにも従業員の生産性を高める術がわからないという事情がある。だからこそ、従業員自身が探求を重ねなければならない、と。
生産性とAIは個人とチームから始まる。重要なのは、AIをどのように使い、どう仕事をリデザインし、何を手放して、何をもっと行うかだ。どれも個人の働き方に根差した問題だ。
カギは「人間ならではの能力」の発達
──AIで「消える仕事」や「賃金が下がる仕事」といったニュースが盛んに報じられています。AIが招くホワイトカラー層の雇用不安や格差拡大をどうみますか。
グラットン:非常に難しい問題だ。AIが行うタスクは予測できるが、新しい仕事がどこから生まれるかは予測しがたい。歴史を振り返ると、新しい技術が生まれたとき、人々は、それが世界をどう変えるのかを予測できなかった。
一方、テクノロジーは、人間には向かない仕事を担うという予測はつく。例えば、思いやりは人間の専売特許だ。ロボットが世話をしてくれても、人間の助けが必要だ。AIが発達しても、人間にしかできないことはある。共感や思いやり、人の話に耳を傾ける、重要な判断を下すといった、人間ならではの能力をどのように発達させていくかがカギだ。


