欧州

2026.05.13 07:00

ドローンと「縦深性」で戦場を統制、ウクライナ前線防御の現在

3重の対戦車壕、3列のコンクリート製対車両障害物「竜の歯」、多数の蛇腹鉄条網などからなるウクライナ側の大規模な障害帯。X(旧ツイッター)で共有された動画より

こうして形成される防御網は縦深性が確保され、かつ非常に複雑なものになっている。シロテンコは、これらの障害物はもはやたんにロシア軍による強襲(アサルト)からウクライナ軍部隊を守るためのものだけでなく、敵部隊の行動を妨害し、混乱させ、直接的に損害を与える主要な交戦手段になっていると強調している。

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シロテンコはまた、この防御体制の決定的な特徴として、工兵作戦に無人・遠隔能力が組み込まれている点を挙げている。ウクライナ軍は障害帯の構築や拡張、とりわけ遠隔の地雷敷設で、航空ドローンや地上ロボットを多用するようになっている。こうした無人システムを活用することで、工兵部隊は人員を危険にさらさずに、戦闘地域の前縁部や後方深くに地雷を敷設することができる。こうした活動はリアルタイムで調整されており、指揮官は障害物の構築状況を監視し、有効性を評価し、戦場の状況に応じて動的に調整を加えることが可能になっている。

ウクライナ軍は、ソ連軍のドクトリンで主流だった大規模で強固な防御拠点という考え方からも脱却している。代わりに現在の防御網は、生存性を重視して設計された陣地に分散配置される多数の小規模部隊によって運用されている。各陣地は目立たないように構築され、ドローンや精密攻撃への防護も備えている。たとえば、塹壕は隠蔽され、相互に接続されており、掩蔽(えんぺい)部は補強されている。掩蔽部にはきわめて堅固につくられたものもあり、ロシア軍は入り口を破壊するためにTM-62対戦車地雷を使用せざるを得なかったケースもある。

さらに、これらの陣地を往復する経路も対ドローン用ネットで防護されており、部隊が安全に補給や交替を行えるようになっている。地域によっては、こうした防護回廊は前線から最大で100kmほどの長さに及んでいる。

突破口の形成を試みるロシア軍の攻撃

ウクライナでの苦戦のために見過ごされやすいが、ロシアは依然として世界最大級の軍隊を保有しており、多種多様な先進兵器システムを配備している。また、ロシアの防衛産業基盤は、ドローンや電子戦システム、極超音速兵器を含め、現代の軍事技術を数多く開拓してきた歴史がある。ロシア軍はこのように多岐にわたる兵器をそれなりの数擁するため、複数の手段を組み合わせてウクライナ軍の防御網の突破を試みることができる。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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