創業者のゾルトコフスキは、Character AIへの不満から代替サービスを作成
Janitor AIの創業者であるゾルトコフスキは、オーストラリアのブリスベン出身で、独学でエンジニアリングを学んだ人物だ。リバタリアン的な気質も持つ彼は、大学1年の途中で中退し、暗号資産取引所のBitfinexとBittrexで働いた。
数年後の2023年初め、ゾルトコフスキはEthDenverのハッカソンでOpenAIのGPTモデルの初期版を試し始めた。ほどなくしてCharacter AIの熱心なユーザーになり、自分が「意地悪な」チャットボットを好むことに気づいた。そうしたボットは、自分に「主導権がない」と感じさせるものだったという(Janitor AIで人気のキャラクターの1つには、パートナーに噛みつくのを好む悪名高いギャングのリーダー、ノヴァ・マリノがいる)。
その後、Character AIはエロティックなコンテンツを遮断するためにフィルターを強化した。これに熱心なファンが反発し、彼らは「大脱出」と呼ぶ動きの中で同プラットフォームを離れた。Character AIに不満を抱き、思想的な動機も持ち、同時にAIにも魅了されていたゾルトコフスキは、性的なチャットを認める代替サービスを作ることにした。
ゾルトコフスキによれば、AIの助けを借りたことで、最初のサイトのコードを書くのにかかった時間は3週間だった。彼はそのサイトをJanitor AIと名付けた。ラテン語でjanitorは、多くの扉の鍵を持つ守護者を指す言葉だ。
2023年6月16日、ゾルトコフスキはCharacter AI関連のRedditフォーラムの1つに、「サイトを立ち上げた。見てみてほしい」と投稿した。その数日後、Janitor AIはTikTok上で影響力を持つロマンスとファンタジーのサブカルチャー「BookTok」の一部として一気に広まった。ユーザー数は、21日で100万人に達した。
Janitor AIは成功したものの、約2800万円のインフラ費用で破綻の危機に
しかし、その成功はJanitor AIを破綻させかけた。トラフィックが急増し、それに伴ってインフラ費用も膨らんだ。ゾルトコフスキによれば、まもなく高額な請求を抱えることになった。その中には、ウェブホスティングとセキュリティを手がけるCloudflareからの18万ドル(約2800万円。1ドル=158円換算)の請求書も含まれていた。
そこで、物語は急展開を迎える。医薬品の価格つり上げで悪名をはせる象徴的存在、「米国で最も憎まれた男」とまで報道されたマーティン・シュクレリが、Discordでゾルトコフスキに直接メッセージを送ってきたのだ。シュクレリは株式と引き換えにGPUと資金を提供すると約束した。追い詰められ、少し世間知らずでもあったゾルトコフスキはその提案を受け入れたが、約束された送金が実行されることはなく、取引はすぐに行き詰まった。最終的にJanitor AIを救ったのは、Sky9 Capitalによるエンジェル投資だった。
月間13兆トークンを約2000万円で処理する運営
Janitor AIの運営コストは、「信じられないほど低い」とゾルトコフスキは言う。ベンチャーキャピタルから出資を受ける多くのスタートアップが恥ずかしくなるほどの低さだという。同社のフルタイム従業員は3人のみで、全員が男性だ。3人はサンフランシスコのSOMA地区にあるロフト付きの空間で、ともに暮らしながら働いている(同社は女性の契約スタッフも雇っている)。経営トップの2人であるCEOのゾルトコフスキとCOOのヒューゴ・スミスは、それぞれ26歳と22歳だ。
2025年5月にコースラ・ベンチャーズの主導でシリーズA資金調達を実施した後も、ゾルトコフスキは同社が調達した金額を明かそうとしない。彼が強調したがるのは、いかに少人数で効率よく会社を運営しているかだ。そこには、18万ドル(約2800万円)規模の請求で会社が窮地に陥りかけた経験が影を落としている。
「2度とあのような状況には陥りたくない。本気で最適化すれば、資金がどれほど長く持つのかを多くの人は知らない。だから我々は、コンピューティングに使う1ドル1ドルについて、徹底して倹約する姿勢を大切にしている」とゾルトコフスキは語る。
彼の手法は、使えるモデルを発掘する作業と高度なエンジニアリングの組み合わせだ。ゾルトコフスキは、Janitor AIのロールプレイに合わせて微調整できる小型のオープンウェイトモデルを絶えず試している。過去にはMistralのモデルを使ったことがあり、現在はグーグルの小型オープンウェイトモデル群「Gemma」を試しているという。ただし、Gemmaには性的表現に慎重すぎる反応を示す場面があり、ユーザーはそうした傾向にすぐ気づく。ゾルトコフスキは、コードを調整し、できる限り効率よく動かそうとしている。
Janitor AIによると、同社は月間約13兆トークンを処理しているが、費用は約13万ドル(約2000万円)にとどまる。AWSのウェブサイトに掲載された料金に基づくと、同程度の処理量をAWSの最も安価で小型のモデルで実行した場合でも、少なくとも100万ドル(約1億6000万円)かかる。より高価なAnthropicのモデルを使えば、費用は5000万ドル(約79億円)を超える可能性がある。
完全な垂直統合を目指し、Janitor AI独自モデルによる事前学習を狙う
最終的な目標は、完全な垂直統合だ。ゾルトコフスキは、Janitor AI独自のモデルを事前学習させたいと考えている。現在のオープンウェイトモデルは、主にコーディング性能を高める方向で作られており、エロティックなロールプレイに必要な物語表現の幅や変化には向いていないことが多いからだ。
「たとえば、新しいグーグルのGemmaモデルでは、『pussy』という単語が、モデルの重みの中で事実上『裏側で禁止』されているように見えた。だが、我々はサンプル出力でその言葉が出るように調整できた。チューニングとは、まさにそのためにある」とゾルトコフスキは語る。


