欧州

2026.05.11 07:00

ロシア防空網に広がる「ミサイル枯渇」 ウクライナのドローン攻勢で消耗、首都の防衛優先

KamAZ-6560トラックに搭載されたパーンツィリ-S1対空ミサイル・砲複合体。2024年7月14日、ロシア西部トゥーラにあるトゥーラ国立兵器博物館(sikaraha - stock.adobe.com)

さらに、ロマノフとは別のロシア側情報源が伝えた内容もミサイル枯渇を裏づける。OSINTアナリストのChrisO_wikiはX(旧ツイッター)で、ロシアの軍事記者マクシム・カラシニコフの記事を紹介している。カラシニコフは、歩兵部隊へ配置転換された防空部隊員たちを取材したという。

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「なぜ彼らが歩兵部隊にいるのか? 理由は単純だ。ブーク発射機用のミサイルが足りないからだ」とカラシニコフは書いている。「車両6両に対してミサイルが1発か2発しかないことも珍しくない」

ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー総司令官は4月、ロシア軍はすでに防空ミサイル不足に直面しているとし、ウクライナによる生産施設に対する攻撃でロシア側の防空能力はさらに低下していると主張した。2025年8月にドローン攻撃を受けたロシア西部ニジニノブゴロド州のアルザマス機器製造工場など、ウクライナ側の攻撃目標には、ミサイル用ジャイロのような不可欠な部品を製造している施設が含まれる。

シルスキーの言うとおりなら、ロシアは「死のスパイラル」に陥っているように見える。ミサイル不足がドローン攻撃のさらなる成功を招き、その成功がミサイル不足にさらに拍車をかけるという悪循環だ。

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最優先の防衛対象は政権中枢

たしかに、ロシア軍はミサイルを完全に使い果たしたわけではない。最近、多数の(おそらく完全に装備を整えた)防空部隊がモスクワ防衛のために配置転換されている。モスクワ一帯ではパーンツィリ数十両が、遮るもののない射界を確保するため専用の塔などの上に高所配置されている。ロシアの論者たちは、指導部は前線部隊を犠牲にして自らの防衛に注力していると指摘している。

地対空ミサイルシステムの都市配備には危険もともなう。ロシア軍の防空部隊が発射したミサイルは、低空を飛んでくる目標に命中せず、住宅などに撃ち込まれることが少なくないからだ。最近も4月にロシア南部クラスノダール地方ノボロシースクでこうした事例が報告されているほか、3月にも同地方で集合住宅が被弾している。また西部のチェレポベツでは、ウクライナのドローン攻撃を受けた際にロシア側のミサイル少なくとも1発が化学工場を直撃したもようだ。

ロシアではドローン攻撃の撮影が禁止されているので、こうした事例は報告されているよりもずっと多く発生している可能性がある。ロシア軍の制度では、防空部隊はドローン攻撃時にミサイルを無駄に使用したことよりも、ミサイルを発射しなかったことのほうが処罰の対象になりやすいのだろう。当然予想されるように、こうした無駄撃ちもミサイル枯渇の一因になる。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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