欧州

2026.05.11 07:00

ロシア防空網に広がる「ミサイル枯渇」 ウクライナのドローン攻勢で消耗、首都の防衛優先

KamAZ-6560トラックに搭載されたパーンツィリ-S1対空ミサイル・砲複合体。2024年7月14日、ロシア西部トゥーラにあるトゥーラ国立兵器博物館(sikaraha - stock.adobe.com)

これらの防空システムは、高速のジェット機や攻撃ヘリコプター、巡航ミサイルなど、さまざま航空脅威に対応できるように設計されている。ウクライナが用いている「ファイア・ポイントFP-1」や「An-196リューティー」といったドローンは高速でもなければ敏捷でもなく、ステルス性が高いわけでもないので、撃墜すること自体は難しくないはずだ。だが、ロシアの論者たちも指摘しているように、一部の防空システムはドローンに対して屈辱的なほどの無能ぶりを露呈している。

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ロシア側にとってそれよりも問題なのは、FP-1のようなウクライナの典型的なドローンは1機あたり6万ドル(約940万円)程度しかせず、しかも月に数千機単位で生産されていることだ。一方、トールが発射する9M330対空ミサイルは1発60万ドル(約9400万円)超とされる。ロシア軍はこうしたミサイルを長年備蓄してきたものの、永遠に撃ち続けることはできない。

そして、その弾薬庫は底が見えてきているようだ。

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ミサイル枯渇の初期兆候

ミサイル不足の最も明白な兆候は、2025年、ロシア軍の防空車両の間で、発射機にミサイルがフル装填されず、空きスロットがある状態のものが目撃されるようになったことだ。さらに詳しく観察すると、別の事実も判明した。再装填されたミサイルの一部は最新型でなく、長期保管から引き出された旧型だったのだ。たとえば、あるオサー防空車両は1970年代にさかのぼる9M33ミサイルを搭載していた

ウクライナの軍事メディアであるミリタルニーの報道によると、鋭い観察者たちは9M33の派生型である9M33Mを搭載しているらしいオサーも見つけている。9M33Mはたんに古いだけでなく、もともとは艦載用のミサイルだ。それを地上用に転用したためか、このオサーには特別な発射機が追加されていた。

OSINT(オープンソース・インテリジェンス)アナリストのWaffentraeger(バッフェントレーガー)も言うように、オサーではミサイルが外から見える構造になっているので、こうした点が気づかれやすい。トールやパーンツィリのように発射機が密閉型の防空システムにも、旧型ミサイルを搭載したり、あるいはスロットの一部を空いたままにしたりした状態で運用されているものがある可能性がある。

ミサイル枯渇を示すもう別の顕著な兆候は、ロシア版「フランケンSAM」(編集注:あり合わせの兵器をつぎはぎしてこしらえた地対空ミサイルシステム)の出現だった。これもミリタルニーが伝えているところでは、R-77空対空ミサイルを地上発射に転用したらしいトラック搭載型発射機が確認された。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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