テクノロジー

2026.05.10 11:00

本当にスクランブルエッグの朝食を作れるロボットハンド

調理するロボットハンド(Genesis AI)

調理するロボットハンド(Genesis AI)

長年、「ロボットハンド」といえば、ほぼ2つのうちのどちらかを指していた。ペンチのように見える平行開閉式のグリッパーか、ヒューマノイドロボット(2足歩行型ロボット)の手首に取り付けられた、マネキンの硬いプラスチックの手先である。後者は報道用の写真ではポーズを取れても、指を使って実際に役立つ作業をこなすことはできなかった。もちろん、最近のヒューマノイドロボットに搭載されている新しいハンドは以前より優れている。それでも、ダンスを披露したりマラソンを走ったりするロボットに、動かない手が付いているのを今でも見かける。実用的な仕事をしているわけではない。

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だが、その状況は急速に変わりつつある。

米サンカルロスとパリを拠点とするスタートアップ、Genesis AIが、「1年間、静かに開発を進めてきた」期間を経て、GENE-26.5を発表した。同社はこれを「ロボットに人間レベルの物理的操作能力を与える、初のロボット用頭脳」と呼んでいる。筆者がこれを書いている時点で、発表動画はXで大きな注目を集めている。

動画では、ロボットハンドが実に印象的な作業をこなしている。卵を割る、トマトを刻む、塩を加えるといった動作を含む20工程の調理を行い、朝食用のスクランブル料理を作って、自ら混ぜた飲み物とともに提供する。その後は作業を切り替え、電線に絶縁テープを巻き(!!!)、ルービックキューブを解く。重要なのは、Genesis AIによれば、これらが完全自律モードで実行されており、多くのロボット動画のような早送りではなく、等倍速で示されている点でだ。

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このハンドは、容器からストローを1本つかみ出し、重なったプラスチックカップの束から1個だけを分離することもできる。これは人間でも難しいことがある作業だ。筆者がこれまで見たロボット操作のデモの中でも、最も印象的なものの1つで、いくつかの点ではKyber Labsの新しいロボットハンドにも似ている。

「物理操作はロボティクスにおいて最も価値のある問題です」とGenesis AIは述べている。「同時に、まだ解決されていない最も難しい問題でもあります」。

Genesisは、Eclipse、Khosla Ventures、Bpifrance、エリック・シュミット、ザビエル・ニールから1億500万ドル(約164億円。1ドル=156円換算)の支援を受けている。これはフランス最大級のアーリーステージ資金調達ラウンドの1つである。

同社は、ロボット向けの基盤モデル、人間の手に1対1で近いロボットハンド、人間の作業者から動き・力・触覚を取得する非侵襲型のデータ収集グローブ、そして数週間分の物理実験を数分に圧縮するシミュレーターまで、技術スタック全体を構築している。同社の主張は、ロボット向け基盤モデルにとってデータこそがボトルネックであり、それを突破する唯一の方法は、人間の器用さを現実の環境で大規模に直接取得することだというものだ。

このデモが管理された環境の外でも通用するなら、本当に大きな意味を持つ。

ただし、問題もある。

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翻訳=酒匂寛

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