テクノロジー

2026.05.10 11:00

本当にスクランブルエッグの朝食を作れるロボットハンド

調理するロボットハンド(Genesis AI)

同じ問題に対する2つの賭け

ある意味で、Genesis AIとKyber Labsは、技術スタックの反対側に賭けている。少なくとも両社は、器用な操作という問題に異なる方向から取り組んできた。

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Genesisの賭けは、AIモデルこそが競争優位性(参入障壁)であるというものだ。最高の基盤モデルを作り、グローブを通じて収集できる最大かつ最も多様な人間の器用さのデータセットを与え、これまでで最速のシミュレーターで訓練する。そうすれば、ハードウェアはその能力を届けるための手段になる。

同社のハンドが存在するのは、必要なものを市販品として購入できなかったからであり、ハードウェア自体が同社の主な焦点だからではない。CEOのジョウ・シエンはTechCrunchに対し、ハードウェアを自社で制御する必要があると気づいて初めて、同社は「フルスタックで進めることにした」と語っている

最終目標は、汎用の物理AIである。そこへ至る道筋はデータと計算資源であり、データは動作するハードウェアから得られる。

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Kyberの賭けは、別の場所から始まった。まずハードウェア。ソフトウェアはその後である。

「最初にこの会社を作りたいと思ったとき、私はソフトウェアを作りたいと思っていました」とハボウスキーは筆者に語った。「それなら、ソフトウェアエンジニアを集めればいいと思ったのです。しかし、使えるものを調べてみると、最高水準のハンドは何十万ドル(数千万円)もして、しかもしょっちゅう壊れる。だから自分たちでハードウェアを作る必要がありました」。

そのハードウェアへの賭けには、明確な仮説がある。人間は精密な位置制御で動いているのではなく、力で動いているという考え方だ。

「指を23.4ミリ離してと言われても、人間にはわかりません」とハボウスキーは言う。「でも、ポテトチップスを壊さずにつまめるだけの力をかけてと言われれば、1日中続けることができます」。

ほとんどのロボットハンドは、間違ったものを最適化している。人間の手の運動学、つまりどう動くかはまねるが、作動方式、つまりどう感じ、どう反応するかはまねていない。そのため、ロボットハンドは写真では人間の手のように見えても、実際に動かすと硬く、不器用に感じられる。

Kyberの設計は、ほとんどのハンドが頼っているギアボックスを取り除いている。「300対1のギアボックスの向こう側では、何も感じることはできません」という。代わりに、同社が「トルク・トランスペアレント・アクチュエーション(トルク透過型駆動)」と呼ぶ方式を採用している。そこではモーター自体が力センサとなる。ハンドは、モーター自体のインピーダンスを測定することで、指の上に乗せられた羽毛さえ検出できる。触覚センサも、高価な力・トルクセンサのスタックも不要だ。

機械における最良の部品とは、部品がないことであるとハボウスキーは言う。これは彼が自然に吸収した、SpaceX的な考え方の1つだという。

Kyberの最初の商用導入先はヒューマノイドではない。臨床検査室に設置される据え置き型システムである。そこでは検査技師が1日中作業台に座り、ピペットを持ち、検体チューブのふたを外し、サンプルを混ぜ、決められた手順に従っている。

「私たちは、魔法のような汎用自律性や、初日からあらゆるロボットを制御し、頼まれたことを何でもこなす球体のようなものを売り込んでいるわけではありません」とハボウスキーは言う。「そこへ到達するための、ずっと現実的な道筋を提案しているのです」。

現時点では、それは脚でも車輪でもなく、あらゆる問題を解く巨大な視覚・言語・行動モデルに大きく注力することでもない。市販のロボットアームに取り付けられ、1つの仕事をうまくこなす、実際に機能するハンドなのだ。

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翻訳=酒匂寛

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