短期利回り低下で問われる、保守的姿勢の機会コスト
この違いは重要だ。
金利が急上昇していたとき、現金保有に伴う機会コストはほとんど意識されなかった。投資家は魅力的な利回りを得ながら、状況が明確になるのを辛抱強く待てた。多くの場合、現金はディフェンシブ資産であると同時に、意味のあるリターン源泉でもあった。
だが今、その計算式は変わりつつある。短期利回りが圧縮されるにつれ、投資家は投資における最も古い問いの1つに再び向き合わざるを得ない。すなわち、「保守的すぎる状態を続けることの長期的なコストは何か」という問いだ。
現金が担う、オプションと資産自体の2つの役割
歴史的に見ると、現金はポートフォリオの中で2つのまったく異なる役割を担ってきた。第1に、オプションとして機能する。市場ストレスや価格の歪み(ディスロケーション)が生じた際に投入できる「ドライ・パウダー(待機資金)」である。第2に、現金そのものが資産として機能し得る。特に、利回りが十分に魅力的になり、リスク調整後で株式や債券と競合できる場合だ。
過去2年、多くの投資家は現金を両方の機能を同時に持つものとして扱うようになった。今後、それはより難しくなるかもしれない。
「アンカリング」が過度な慎重さを生み、次のリスクとなる
行動面での課題は、投資家が直近の経験にすぐに「アンカリング(係留)」してしまうことにある。現金でボラティリティが最小限のまま5%近い利回りを得た後、多くの投資家はそれが一時的なものではなく「通常」だと無意識に捉えるようになる。このアンカリング効果が意思決定を歪め得る。
高金利普通預金口座やマネー・マーケット・ファンドの利回りが大幅に低下する一方で、株式が収益成長の複利効果を積み上げ続けるなら、投資家は「異例に魅力的な現金利回り」に慣れてしまったがゆえに、生産的資産への配分が不足した状態に最終的に陥る可能性がある。
言い換えれば、次のリスクは市場への過度なエクスポージャーではないかもしれない。過度な慎重さである可能性がある。


