さらに続けてハイダー氏は、2022年ごろから「Sound by Bose」というネーミングの下に、他社製品に対して音響チューニングや技術提供を行うライセンシング事業を本格化させてきた狙いについて、次のように説明を続けた。
「ボーズが自社で保有することが、必ずしも適切ではない製品カテゴリーやセグメントがあります。このような場合には、ボーズによる技術ライセンス供与を通じてパートナーシップを組む戦略を押し進めてきました。それぞれに一貫する狙いは、優れたサウンド体験を、これからも可能な限り多くの人々に届けることです」
2024年のマッキントッシュ・グループ買収、そしてライセンシング事業である「Sound by Bose」の強化。一見すると対極にあるこれらの動きは、ボーズが描く「音の全方位戦略」において重要な補完関係にある。
パートナーといっしょにサウンドの可能性を広げる
Sound by Boseの主な取り組みは、ボーズが長年培った音響工学や信号処理の知見を、他社製品の設計段階から共有・提供し、共同でサウンドチューニングを行うというものだ。
日本国内ではエプソンがボーズのライセンスを受けて、音質にもすぐれるコンパクトなオーディオシステム一体型の液晶プロジェクターを商品化している。中国のAR/XR系スタートアップであるXREALも、2024年末にSound by Boseを取得したスマートグラス「XREAL One」を発表した。最前線で脚光を浴びるテックの成長分野にも、ボーズが理想に掲げる“優れたサウンド体験”の裾野は広がっている。
「私たちは、音響の基礎研究において唯一無二の知見を持っています。このイノベーションを自社製品の中に閉じ込めておく必要はありません。インテルのチップセットが様々なPCに搭載されているように、ボーズの技術が他社のスマートグラスやプロジェクターなどのデバイスに組み込まれることで、世界中のより多くの人々にボーズのサウンドを届けることができます」
ハイダー氏は、サウンドが介在するあらゆるデバイスやサービスにボーズのエコシステムを広げていくことが、同社にとっての勝ち筋になるとも語っている。
こうしたパートナーシップ戦略は、デジタルヘルスやウェルネスといったオーディオビジュアル以外の領域にも広がっていくのではないだろうか。筆者はその可能性にも期待している。


