サイエンス

2026.05.06 16:30

人の寿命の限界は「遺伝子のメカニズム」で決まる可能性

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人の寿命の限界は、どの遺伝子が活性化しているか、そして、それらの遺伝子が生成する指令を細胞がどう編集するかによって決まる可能性がある。

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哺乳類26種を対象とした最新の研究により、短命種と長寿種のあいだで、選択的スプライシング(alternative splicing:選択的な切り貼り)と呼ばれるプロセスが、正確かつ予測可能な形で異なることが明らかになった。

この発見は、寿命調節におけるまったく新しい生物学的な軸を特定するものだ。この軸は、以前から研究されてきた遺伝子発現の変化とは独立して機能するものであり、将来的には加齢関連疾患への介入につながる可能性がある。

種の寿命を決定する分子機構は、単一の生物学的階層に固定されているわけではない。それは、少なくとも2つの階層すなわち「遺伝子の活性」と「遺伝子(RNA)の編集」にまたがっている。この「編集」という階層は、今ようやくその全貌が明らかになりつつある領域だ。

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細胞は指令をどのように扱うのか

人の遺伝子はすべて、そのタンパク質産物を複数パターンで生成することが可能であり、このプロセスは選択的スプライシングと呼ばれる。遺伝子がmRNA前駆体に転写された後、細胞の機構は、どのセグメント(部分)を残し、どのセグメントを使わないかを取捨選択した上で、最終的な指令セットを組み立てる。遺伝子の中でタンパク質の構成要素を実際にコードしているセグメントは、エキソン(exon:発現配列)と呼ばれる。

レゴのブロックをイメージしてほしい。それぞれのブロックは、最終的な組み立てモデルを構成する小さなパーツにあたる。ブロックの組み合わせを変えることで、同じレゴのセットから、さまざまな構造をつくり出すことができるが、それと同じように細胞も、異なるエキソンをつなぎ合わせることで、それぞれ独自の形状と機能を持つタンパク質をつくり出すことができる(これらは、「アイソフォーム[isoform]」またはバリアント[variant]と呼ばれる)。

複数の部位を持つヒト遺伝子のうち最大95%が、こうした編集を受ける。その結果、有限数の遺伝子から、タンパク質の多様性が拡大する。こうしたプロセスは以前から、疾患と関連付けられてきた。遺伝性疾患やがんの約15%に、スプライシングのエラーが関与している。

依然として不明なのは、最大寿命が異なる種のあいだで、スプライシングのパターンに体系的な違いがあるかどうか。そして、そうした違いに生物学的な意味があるかどうかだ。

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翻訳=米井香織/ガリレオ

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