サイエンス

2026.05.06 16:30

人の寿命の限界は「遺伝子のメカニズム」で決まる可能性

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26種に見られるパターン

今回の研究では、寿命が2年強から37年までの哺乳類26種に関して、脳、心臓、腎臓、肝臓、肺、皮膚という6つの組織におけるスプライシングパターンを分析した。その結果、最大寿命と相関するパターンを示す731のスプライシング事象を特定した。タンパク質をコードする遺伝子の一部であるエキソンの数(最終的な産物に取り込まれる数)が増加していたが、残りの約半数は、真逆の傾向を示していた。

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こうしたスプライシング事象が見られる遺伝子群は、全体的な発現レベルが寿命と相関する遺伝子群とは、大部分が別のものだ。つまりスプライシングは、標準的な遺伝子活性(遺伝子の発現量)の測定では完全に見逃されてしまうような、寿命に関する情報を捉えている。

転写とスプライシングという2つの調節機構は、並行して機能しており、それぞれが、ある種を長寿にし、別の種を短命にする要因の異なる側面をコードしている。

ほとんどの臓器組織において、寿命と、(個体のサイズを示す)体重の影響は密接に関連している。しかし、脳のスプライシングパターンはこの制約に縛られない。脳は、その生物種の寿命と結び付いた、独自のスプライシングプログラムを維持している。

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脳には、特定の組織にのみ見られる「寿命に関連したスプライシング事象」が、他の臓器と比べて2~3倍多く存在している。また、寿命との関連が指摘されているスプライシング関連遺伝子の主要グループにおいて、その15%以上を占めているのは、脳細胞の通信や変化をつかさどる遺伝子群(ニューロン間の接続形成、神経線維の構築、化学信号の放出を助けるものなど)だ。

この研究が、加齢にとって意味すること

この研究は、治療法をもたらすものではなく、地図をもたらすものだ。この研究で特定された、遺伝子やシグナル伝達経路、調節タンパク質が構成するネットワークは、健康寿命を伸ばすことを目的とした介入のターゲットになる可能性がある。

分子レベルの柔軟性を与えるタンパク質領域において、長寿種が、寿命に関連するスプライシングに富んでいることは、彼らがスプライシングレベルの微調整を通じて、ストレスや代謝的負荷に適応する細胞の能力を維持している可能性を示唆している。

80代、90代まで生き、慢性疾患を抱える人が増加するなか、この研究は根本的な問いを再定義する。老化とは、単にどの遺伝子がオンまたはオフになるかという問題ではない。それは、細胞がそれらの遺伝子から送られるメッセージをどのように編集するか、そして、自然がすでに長寿のために選別したパターンへと導くことができるかどうかにかかっているのだ。

forbes.com 原文

翻訳=米井香織/ガリレオ

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