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2026.05.01 08:30

マスク、xAIがOpenAIのデータを「蒸留」し訓練と法廷で認める──その意味とは

米国時間2026年4月28日、OpenAIとの裁判に出廷するイーロン・マスク。Photo by Benjamin Fanjoy/Getty Images

米国時間2026年4月28日、OpenAIとの裁判に出廷するイーロン・マスク。Photo by Benjamin Fanjoy/Getty Images

イーロン・マスクは米国時間4月30日、自身のAIスタートアップであるxAIが、OpenAIの技術を使用して独自のAIモデルを学習させてきたと述べた。この手法は一般に「蒸留(ディスティレーション)」と呼ばれる。この発言は、マスクがライバルAI企業OpenAIに対し、非営利組織としての約束を放棄して営利モデルへ移行したと訴えている訴訟で、反対尋問を受けている最中になされた。

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マスクは反対尋問で、xAIがOpenAI技術を部分的に蒸留したと認めた

OpenAI側弁護士がマスクに対し、xAIがOpenAIの技術を「蒸留」したことがあるかと尋ねたところ、マスクは「一般的にAI企業は他のAI企業から蒸留している」と答えた。ニューヨーク・タイムズが報じている。

蒸留とは、大規模なAIモデルの出力を使って、より小規模なモデルを学習させるプロセスを指す。マスクは、xAIが「部分的に」OpenAIの技術を使って独自のAIモデルを学習させたと述べた。

OpenAIの利用規約は、出力を競合するAIモデルの学習に使用することを禁じている。

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蒸留は、大規模AIが小規模モデルに教え、効率的な動作を可能にする

蒸留は、あるAIモデルを用いてより小さなモデルを教える手法だ。これによって後者は、より少ない計算資源で効率的に動作できる。ゼロからAIモデルを構築する際に通常伴う高額なコストをかけずに、小規模モデルを学習させるために用いられる。

蒸留の核心は、研究開発コストを負担せずに他社のAIを流用できる点

蒸留をめぐる論争の核心は、多額の研究開発コストを負担することなく、他社のAI技術を用いて(実質的に流用して)AIモデルを構築できてしまう点にある。

OpenAIのChatGPT、グーグルのGeminiといった初期のAIモデルの学習には、1億ドル超(約156億円超。1ドル=156円換算)の費用がかかった。こうした数字は、より高度なAIモデルの開発に伴って、さらに増加すると見込まれている

DeepSeek、自社モデルを約4600万円で学習させたと主張

しかし蒸留を用いれば、こうした巨額のコストを大幅に圧縮できることになる。例えば、OpenAIとAnthropic(アンソロピック)の技術を蒸留したと指摘されている中国のAIスタートアップDeepSeekだ。DeepSeekは、R1モデルの学習コストは29万4000ドル(約4600万円)だったと主張している。

Anthropic、蒸留が国家安全保障上のリスクになると警告

Anthropicは、蒸留が国家安全保障上のリスクになるとも警告している。2026年初めの声明では、蒸留されたモデルには、生物兵器の作成やサイバー攻撃の実行を狙う悪意ある行為者を阻止するために設けられたセーフガードが欠ける可能性があると指摘した。

OpenAIは2026年初め、蒸留の疑いがあるとして複数のアカウントを停止した。同社はDeepSeekに対し、OpenAIの技術を使って自社のオープンウェイトモデルを学習させたと非難した。DeepSeekはこのモデルについて、より安価でありOpenAIなどの大手AI企業のモデルと同等かそれ以上に効率的だと主張している。

Anthropicもまた、DeepSeekおよびMoonshot AI、MiniMaxといった他の中国企業を非難している。これら3社が自社AIモデルClaude(クロード)の能力を利用し、独自モデルを強化する「産業規模のキャンペーン」を行ったというのが同社の主張だ。Anthropicは利用規約が違反されたとし、約2万4000の不正アカウントを通じて、3社がClaudeと行った約1600万件のやり取りを特定したと述べた。

マスクの指摘──海賊版書籍をめぐる、Anthropicの約2340億円の和解金

Anthropicがこうした蒸留の疑惑を提起した際、マスクは投稿で反論。海賊版書籍をAIモデルの訓練に使用したという訴訟を解決するため、Anthropicが2025年に15億ドル(約2340億円)の和解金を支払ったことに言及した。

forbes.com 原文

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