リーダーの言葉と従業員の体験の隔たり
リーダーらは正しいことを言っており、従業員も耳を傾けている。しかし、何か問題が発生し、その結果がメッセージとは異なる現実を露呈したとき、その乖離が表面化する。これはコミュニケーションの問題ではなく、信頼性の問題だ。
心理的安全性は方針ではなく前例によって築かれる。従業員は言われたことよりも実際に起きていることをはるかに重視する。その2つの間にこそ恐怖が潜んでいる。
INTOOの最高収益責任者(CRO)のミラ・グリーンランドはこう述べている。「多くの組織はイノベーションや学習について正しいメッセージを発信している。しかし、このデータは方針と認識が常に一致しているわけではないことを示している。従業員がイノベーションを求められながら、同時にミスしたときのことを恐れている場合、創造性は停滞してしまう可能性がある」
隔たりを埋めるためにリーダーがすべきこと
幸い、仕組みの多くはすでに整っている。従業員は上司が受容的で、ミスが学習機会として扱われ、実験が奨励されている文化だと認識している。リーダーにとっての課題は、従業員に伝えられている内容と従業員が確信していることの差を埋めることだ。
そのためには、まず正直な自己評価から始める必要がある。検討すべき問いは次の通りだ。
・従業員はミスを学習機会だと思っているか、それともそう聞かされているだけか
・マネジャーらは自らの知識不足を認めることで脆弱性を示しているか
・失敗後のフィードバックは建設的に行われているか、それとも密かな罰が伴っているか
・大胆な挑戦をして失敗してもなお組織内で成功している人の実例が存在するか
最後の問いが最も重要だ。方針は「あるべき姿」を示すが、前例は実際に起きていることを示す。従業員は後者から判断する。誰が評価され、誰が疎外され、野心的なアイデアが失敗したときに何が起きるのかを見ている。
グリーンランドはさらにこうも語る。「大規模なイノベーションを実現するためには、組織は心理的安全性を単に伝えるだけでなく、常に実感できる環境を整えなければならない。つまりミスについて正直に語り合える場を設け、さらに重要なのはそこから得られる学びについて議論する場を設けることだ。リーダーが率直に失敗を共有し、自らの弱さをさらけ出し、挫折を学びの機会としてとらえるとき、従業員はミスが解雇につながるのではないかという不安から解放される。創造性が加速するのはそのときだ」
このような変化はゆっくりと進むが、効果は蓄積されていく。
イノベーションは恐怖がなくなってから始まる
リーダーが期待することと、従業員が安心して行えると感じることに隔たりがあるとイノベーションは阻まれる。成功する組織とは、大胆なアイデアが目に見える形で評価され、そうしたリスクを取って失敗した人が次に大胆なアイデアが必要となった際にも依然としてその場に居続けられる組織だ。
リーダーが自らに問うべきことは1つだ。従業員が一歩踏み出したとき、自由にさせてもらえていると感じるだろうか、それとも縛られているように感じるだろうか。


